2013 Fiscal Year Research-status Report
フェントン反応は生体内で鉄還元反応により引き起こされるのか?
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24780081
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
佐藤 純一 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (70439884)
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Keywords | 鉄 / 鉄還元酵素 / フラビン |
Research Abstract |
今年度は、大腸菌において前年度に引き続き鉄還元酵素を探索し、精製された鉄還元酵素を用いた遊離フラビン、鉄貯蔵タンパク質との反応解析を試みた。 1, 大腸菌における鉄還元活性を有する酵素の探索:今年度、大腸菌の無細胞抽出液から分画された最も鉄還元活性の高い画分から、鉄還元活性を示すとの報告がある既知のフラビン還元酵素が精製された。そこで、鉄還元酵素をスクリーニングするための活性測定法を3種類(鉄還元活性(2種):NAD(P)Hの酸化、二価鉄の生成、フラビン還元活性(1種):NAD(P)Hの酸化)とし、再度大腸菌無細胞抽出液を用いた分画を試みた。その結果、既に検出されていた鉄還元活性を有する5つの画分においてフラビン還元活性を検出した。更に、フラビン還元活性を示す新たな活性画分が1つ検出され、この画分においても二価鉄の生成が検出された。ラン藻も同様の実験を試みた結果、ラン藻無細胞抽出液中から精製されていた2つの鉄還元活性を示す画分は、共に二価鉄の生成及びフラビン還元活性も観察され、この2つの画分以外に目的の活性は観察されなかった。 2, 大腸菌の鉄還元酵素と鉄貯蔵タンパク質の反応解析:大腸菌の鉄還元酵素として報告済みであるFprとNfnB、大腸菌の鉄貯蔵タンパク質であるFtnAとBfrを用い、遊離フラビン存在下、非存在下においてFtnA内、Bfr内に貯蔵されている三価鉄の二価鉄放出反応を検討した。その結果、遊離フラビン非存在下ではFtnAとBfrからの二価鉄放出は観察されないが、遊離フラビン存在下においては濃度依存的に二価鉄放出速度が増加した。FprとNfnBの遊離フラビンに対する酵素反応速度論解析を行った結果、Fprの方がNfnBよりも遊離フラビンに対して高い触媒効率を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた実験について、生体内遊離フラビン濃度条件下における鉄還元酵素と鉄貯蔵タンパク質の反応性の検討、および鉄還元酵素の酵素反応速度論解析については、一定の成果を得ることができたと考えている。 しかし、鉄還元活性を有する酵素の精製については、活性測定方法を3種類として再度検討を行った結果、既に得られていた画分を再度精製する必要性が出てきたため、当初よりも時間が掛かっている。精製は現在も継続中であるが、昨年度の結果より新たな活性画分を取得し、現在その画分からの酵素精製にも目処がついていることから、鉄還元酵素を探索するという目標は達成できると考える。また、遊離還元フラビンの反応性解析については、既にコントロールとなる鉄キレート化合物を用いた解析を行っており、次年度で目標を達成していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1, 大腸菌から得られた高いフラビン還元活性を示す画分は、他の活性画分と比較して高い鉄還元活性を示した。そこで、引き続き大腸菌から鉄還元活性及びフラビン還元活性を有する酵素の精製を試みる。現在、酵素精製のための条件検討が終了している。精製完了後、精製酵素の諸性質を検討し、既に精製されている酵素との比較検討を行いたい。 2, 定量された遊離フラビン濃度条件下で、鉄還元酵素と各種鉄キレート化合物との反応解析を試みた。しかし、鉄還元酵素は遊離フラビンと各種鉄化合物の両方を基質として用いることができるため、まずは遊離還元フラビンと各種鉄キレート化合物との反応性を検討することが必須であると推察された。そこで、stoppedflow装置を用いて前任者の再現実験を行い、コントロールとなる鉄化合物を用いた解析を行った。今後鉄キレート化合物の種類を増やし、更に解析を試みる予定である。その結果をもとに鉄キレート化合物を選抜し、選抜した鉄キレート化合物を用いた各鉄還元酵素との酵素反応速度論解析を試みる。 3, 2のStoppedflow装置を用いた遊離還元フラビンと各種鉄キレート化合物との反応解析に、過酸化水素を添加した際の解析も加えていきたいと考えている。過酸化水素の濃度を変化させ、更に細胞内から定量された濃度の遊離フラビンを用いることで、より細胞内濃度に近い反応系で実験を試みる。 4, ストレス培養菌体を用いたフリーラジカルの動態解析と関連遺伝子の発現解析を計画していたが、次年度は鉄濃度変化培養条件下で生育させた菌体を用いて、鉄還元反応に関与する遺伝子の発現解析を主に行っていきたいと考えている。 上記の通り実験を計画しているが、今後その都度実験経過をよく観察することで、計画する実験対象の絞り込み等は行っていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、所属学会の大会が東京であり旅費が掛からなかったこと、更に次年度海外で国際学会に参加予定のために旅費を節約し、使用した。 平成26年度においては、当初の計画通り使用していく予定である。 論文投稿、国際学会への参加も予定しているので、予定通り使用できると考えている。
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[Journal Article] Adaptive response of Amphibacillus xylanus to normal aerobic and forced oxidative stress conditions.2014
Author(s)
Mochizuki D, Arai T, Asano M, Sasakura N, Watanabe T, Shiwa Y, Nakamura S, Katano Y, Fujinami S, Fujita N, Abe A, Sato J, Nakagawa J, Niimura Y.
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Journal Title
Microbiology
Volume: vol. 160 no. Pt 2
Pages: 340-352
DOI
Peer Reviewed
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