2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780084
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
斎藤 茂樹 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (30589908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 亜セレン酸還元酵素 / セレン酸還元酵素 / 金属ナノ粒子 |
Research Abstract |
本研究は高濃度セレン蓄積土壌から単離された Bacillus 属細菌の亜セレン酸還元酵素を単離同定し、その還元機構を分子レベルで解明することを目的としている。その目的達成のために以下の 4 点について段階的に進めている。 (1) Bacillus sp. NTP-1 株の亜セレン酸還酵素を「精製」もしくは「トランスポゾンを用いた亜セレン酸還元能欠損株の作製」により同定する。(2) Bacillus subtilis もしくは大腸菌による異種細胞発現系を構築する。(3) 活性に関わると予想される領域に点変異を導入することで還元に関わるアミノ酸残基を特定し、亜セレン酸還元機構を分子レベルで明らかにする。(4) セレン粒子形成のメカニズムを解明する。 (1) に関しては、本酵素の精製を行う過程で、複数のタンパク質が亜セレン酸還元活性に必要であることを示唆するデータが得られたが、本酵素を単離するには至らなかった。そこで Enterococcus faecalis CG110 株を用いてトランスポゾンを本菌に導入し、亜セレン酸還元能欠損株を探索したところ、亜セレン酸ならびにセレン酸還元能欠損株を 2 株得た。現在、挿入部位が明らかになったものから順次相補実験を行っている。亜セレン酸還元酵素欠損株が得られたことは本研究を遂行する上で非常に意義が大きい。これにより亜セレン酸還元酵素遺伝子単離実現へ大きく近づいたと考えている。目的 (2) (3) は (1) 達成後行う。(4)に関しては、NTP-1 株を始め亜セレン酸還元活性を持つ菌が生産したセレンナノ粒子を菌体から分離し、粒子表面に付着しているタンパク質を同定するという手法をとっている。これまでに複数菌株から粒子表面タンパク質を複数同定している。現在欠損株を作製し、同定したタンパク質が粒子形成に影響を与えるか確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記 (1) に関しては 70% 達成できたと考えている。本研究を進める上で鍵となる亜セレン酸還元能欠損株を単離出来た意義は大きい。また、トランスポゾンを用いた欠損株の作製方法ならびに挿入部位の決定方法を確立することが出来た。次の段階は、単離された遺伝子を欠損株に導入することである。これにより活性が回復されれば亜セレン酸還元酵素遺伝子が単離・同定されたことになり、(1) が達成されたことになる。上記 (2) (3) に関してはまだ達成されていない。しかしながら (2) (3) を行う準備は整っているので、(1) 達成後速やかに本段階に進むことが出来る。また、菌体を用いて他のオキシアニオンによる亜セレン酸還元活性の阻害を調べたところ、嫌気条件下で亜硫酸により活性が阻害されることがわかった。この結果は組替え酵素を用いた速度論解析を行う上で重要な基礎データとなる。上記 (4) に関しては 50% 達成できていると考えている。セレンナノ粒子表面に付着しているタンパク質を de novo シーケンシングと Mascot 解析により同定できた。今後これら粒子表面付着タンパク質遺伝子の欠損株を作製し、粒子の形状を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて観測する。これによりセレンナノ粒子の生合成に関わるタンパク質を明らかにし、(4) を達成する。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、24 年度に得られた亜セレン酸還元能欠損株を用いて亜セレン酸還元酵素の同定を行う。同定後、当初の予定通り異種細胞発現系を構築し、分子生物学的手法を用いて還元に関わるアミノ酸残基を特定することで亜セレン酸還元機構を分子レベルで明らかにする。次に、欠損株と野生株の表現型 (生育速度、亜セレン酸耐性濃度、セレンナノ粒子形成能等) の比較を行い、また、本酵素の細胞内局在について明らかにする。セレンナノ粒子形成機構に関しては、24 年度に同定されたセレンナノ粒子表面に付着しているタンパク質について、それらを欠損させた変異株を作製し、粒子の形成に関わるタンパク質を明らかにする。最後に亜セレン酸還元能を遺伝子組換えにより高めた菌を作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種遺伝子破壊株の作製を始め、生化学・分子生物学的研究を進める必要があるため、消耗品費として約 165 万円を計上している。当研究課題に参加した修士学生 2 名に対してそれぞれ 2 件の学会発表を見込んでおり、そのための国内旅費 (成果発表旅費) として、15 万円を計上している。研究成果投稿料として 10 万円を計上している。
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