Project/Area Number |
24780088
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
森 茂太郎 国立感染症研究所, 細菌第二部, 室長 (60425676)
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Keywords | 抗酸菌 / ヌクレオチド / 加リン酸分解 / インシリコスクリーニング |
Research Abstract |
本研究では, 結核菌の細胞内寄生に関与していると推定される遺伝子・タンパク質の詳細な機能と構造の相関を明らかにするとともに, 得られた知見に基づいて結核菌の細胞内寄生の成立を特異的に阻害する化合物の探索を行い, 新規抗結核薬の開発に結びつけることを目的としている. 本年度は, これまでに明らかにしてきた結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素(Rv2613c)の詳細な機能と構造の相関解析結果に基づいて, 本酵素の活性を阻害すると予想される化合物をインシリコスクリーニングで選択した後, 実際の阻害活性を測定することによって, 本酵素の活性を阻害する化合物を10種類見出した. さらにそのうち4種類の化合物については, Rv2613cと1次構造上で高い相同性を示すMycobacterium avium由来MAV_3489, 並びにM. smegmatis由来MSMEG_2932の活性も阻害するが, Saccharomyces cerevisiae由来のヌクレオチド加リン酸分解酵素の活性は阻害しないことを示した. これらの結果から, 本研究結果に基づいて, 結核を含む抗酸菌に特異的に作用する抗菌薬のデザインが可能であることが示唆された. さらに, Rv2613c以外の新たな標的タンパク質として, 結核菌のゲノム上に存在しているRv1505からRv1516cまでの遺伝子がコードしている12種類のタンパク質を選び, 大腸菌内での発現系を構築した. 作製した発現株を用いた発現誘導実験の結果から, Rv1509とRv1514cについて可溶性画分での発現を認めた. 一方, Rv2613c遺伝子を破壊した結核菌, MAV_3489遺伝子を破壊したM. avium, 及びMSMEG_2932遺伝子を破壊したM. smegmatisの作製を目的として, それぞれの破壊株作製用のプラスミドを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では, 結核菌の細胞内寄生に関与していると推定される遺伝子・タンパク質を標的分子として選び, その詳細な機能と構造の相関を明らかにするとともに, 得られた知見に基づいてその機能を特異的に阻害する化合物を特定することによって, 新規抗結核薬の開発に結びつけることを目的としている. これまでに, 結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素(Rv2613c)の詳細な機能構造相関解析の結果に基づいて本酵素の活性を阻害すると予想される化合物をインシリコスクリーニングで選択した後, Rv2613cを含む4種類のヌクレオチド加リン酸分解酵素(Mycobacterium avium由来MAV_3489, M. smegmatis由来MSMEG_2932, 及びSaccharomyces cerevisiae由来APA1)に対する実際の阻害活性を測定することによって, 抗酸菌由来のヌクレオチド加リン酸分解酵素の活性のみを特異的に阻害する4種類の化合物を特定した. さらに, Rv2613c以外の新たな標的タンパク質として, 結核菌由来の12種類のタンパク質(Rv1505からRv1516c)を選び, 大腸菌を宿主とした発現系を構築し, Rv1509とRv1514cについては可溶性画分での発現を確認した. これらの結果については積極的に学会発表を行った. このように, 新規抗結核薬のデザインに結びつく化合物を同定するなど, 当初の目標通りに研究の大部分は順調に進展している. 一方, 標的遺伝子を破壊した株の作製については, 結核菌以外にもM. aviumやM. smegmatisにおいてもそれぞれの加リン酸分解酵素をコードする遺伝子を破壊した株の作製を進めているものの, 抗酸菌の生育速度が遅いこともあり破壊株の作製に時間がかかっている. 上記の現状を考え合わせて, 本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した, 抗酸菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素(結核菌由来Rv2613c, Mycobacterium avium由来MAV_3489, 及びM. smegmatis由来MSMEG_2932)の活性のみを特異的に阻害する化合物を用いて, 抗菌活性や細胞毒性を測定するとともに, 得られた結果に基づいて構造最適化を行うことによって, 新規抗結核薬のデザインに結びつける. 抗菌活性の測定では小川培地や7H9の液体培地など使用するとともに, 細胞毒性についてはV79細胞などを用いる. 一方, 可溶性に発現することを確認した結核菌由来Rv1509とRv1514cタンパク質については, それぞれの精製を行い, 機能や構造の解析を進める. 1次構造上のモチーフ解析の結果から, Rv1509とRv1514cはそれぞれmethyltransferase活性とglycosyltransferase活性を有することが推測されることから, 機能解析ではまずそれぞれの活性を市販のキットを用いて同定することを試みる. また構造解析では, 精製したRv1509とRv1514cの結晶化を行い, 得られた結晶を用いてX線結晶構造解析による立体構造の決定を目指す. また, これまでに調製した破壊株作製用のプラスミドを用いて, 標的遺伝子(結核菌 : Rv2613c, M. avium : MAV_3489, 及びM. smegmatis : MSMEG_2932)を破壊した株の作製を進める. 得られた破壊株の感染能について, ヒトの肺胞細胞(A549細胞)や単球様細胞(U937細胞)より分化させたマクロファージ等の培養細胞, 並びに感染動物モデル(モルモット)を用いて明らかにするとともに, 野生株における感染能との比較を行う. これらの研究で得られた成果については, 積極的に国内外の学会での発表を行うとともに英文誌への投稿も行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通りに研究費を使用したが, 年度をまたいだ支出などを行うことから次年度使用額が発生した. 繰越した助成金は翌年分として請求した助成金と合わせて下記の項目に使用する予定である. 研究の遂行に必要な試薬類やプラッチクス製品などの消耗品に加えて, 構造解析を行うために放射光施設を利用することから, 大量のデータを取扱える外付けHDDも購入する. また, 本年度は, 海外で行われる国際学会(1件), 並びに国内学会(2件)での研究成果発表を予定しているため, その旅費と参加費としても支出する. さらに, 本研究課題で得られた研究成果については英文誌での発表も進めていることから, 発表に係る英文校正の費用や投稿料, 及び別刷代としても研究費の使用を予定している. その他, 振込手数料などにも支出を行う.
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