2012 Fiscal Year Research-status Report
機能未知Y染色体遺伝子による骨格性差構築の新規分子基盤の解明
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24780094
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井上 和樹 愛媛大学, 総合科学研究支援センター, 助教 (60623725)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 性差 |
Research Abstract |
本年度は作出した全身性Y染色体遺伝子欠損マウスの解析を行った。まず基本パラメーターの解析を行った。解析項目としては、外観観察、体重および頭胴長計測による成長曲線の作製、生存曲線、臓器重量、ELISAを用いた血中ホルモン濃度の測定を行った。Testosterone、17β-Estradiol、LH,FSH、Growth hormone、IGF-1、PTHに変化を認めなかった。しかしながら、頭胴長計測による成長曲線を作製した結果、成長遅延を認めた。そこで、アリザリンレッド・アルシアンブルー染色による胎児の骨格標本を作製し、骨格形態の観察を行ったところ、骨格の形状に大きな異常は認めなかったものの、大腿骨・脛骨骨長の短縮が認められた。サフラニン・ファーストグリーン染色を行い、成長板軟骨層の計測を行い、成長板軟骨層の増殖軟骨層および肥大軟骨層の長さを計測したところ、軟骨層の長さに異常が認められた。そこで、初代培養軟骨細胞を用いて、増殖やアポトーシスに異常が起きているかを解析したところ、軟骨細胞の増殖およびアポトーシスに異常は認められなかった。現在、軟骨細胞分化の異常に関して解析を行っている。さらに、骨量に関する解析を行った。軟X線撮影およびDEXA法による骨密度測定を行った。海綿骨および皮質骨のいずれの部位において骨量が変動しているかの詳細な解析を行ったところ、全ての部位にわたって骨密度の減少変化が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当該年度の研究計画では、全身性のY染色体遺伝子欠損マウスの表現型解析として、基本パラメーター(外観観察、体重および頭胴長計測による成長曲線の作製、生存曲線、臓器重量、ELISAを用いた血中ホルモン濃度の測定)の解析および骨格系の解析を行う予定であった。当該年度では、全身性遺伝子欠損マウスの解析により、血中ホルモン濃度が正常であることを確認することができた。さらに、成長曲線測定により、遺伝子欠損マウスが成長遅延を呈することを見いだし、骨長の短縮が起きていることを明らかにすることができた。骨格系の詳細な解析を行うことにより、骨密度が低下していることが明らかとなり、Y染色体遺伝子が骨量の制御に関与することを明らかにした。以上のように、軟骨解析に関しては、当初の研究計画通りに遂行することができた。骨量解析に関しては、骨密度測定まではおこなったものの、μCTによる解析が行えなかったので、次年度の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
骨量解析として、骨形態計測、マイクロCTによる解析を行う。さらに、初代培養細胞を用いたin vitroでの機能解析と生化学的手法を用いた分子機能の解析を中心に行う。分化培地にて培養しY染色体遺伝子の分化における機能を解析する。骨芽細胞分化はアルカリフォスファターゼ染色およびフォンコッサ染色、軟骨細胞分化はアルシアンブルー染色やアリザリンレッド染色により評価する。また、これら細胞よりRNAを抽出し、real-time PCRによりマーカー遺伝子の発現変動を解析する。骨芽細胞では、Runx2、Osterix、ALP、Osteocalsinなど、軟骨細胞では、Sox9、Col2a1、Aggrecan、Runx2、Col10a1などの発現を解析する。Y染色体遺伝子が骨軟骨細胞分化を制御する可能性が示唆された場合には、骨軟骨細胞の主要な転写因子であるRunx2、Osterix、Sox9などの転写能をY染色体遺伝子が制御するかを解析する。まずルシフェラーゼアッセイにより転写制御を評価する。次に、これら転写因子の既知標的遺伝子の発現変化をKOマウス由来の細胞を用いて評価する。また、標的遺伝子のプロモーター上にリクルートされるか否かをChromatin免疫沈降法(ChIP)により解析する。さらに、これら標的遺伝子プロモータ上のヒストン修飾が変化しているかを野生型雄マウスおよびKOマウス由来細胞を用い、各種ヒストン修飾抗体を用いたChIPアッセイにより解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究年度の途中に、東京大学から愛媛大学へと異動することとなり、研究を一時中断せざるをえず、当該年度に使用予定であった研究費を次年度に使用することとなった。 次年度に繰り越しとなった研究費は、当該年度に遂行できなかった。骨形態計測およびμCTの測定に必要な少額備品や消耗品に使用する予定である。さらに、次年度は、初代培養細胞をもちいた実験を計画していることから、細胞培養に必要な、培地・血清・抗生剤・培養ディッシュなどの消耗品類、細胞染色試薬、リアルタイムPCRを行うためのポリメラーゼやRNA試薬、ChIPアッセイを行うための抗体やビーズなどの試薬を購入するために用いる予定である。また、マウスを飼養するためのえさ代やケージ・ラック使用料に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)