2014 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌型メナキノン生合成経路酵素群の立体構造解析及び反応機構解明
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24780097
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (50344023)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酵素反応機構 / MqnD / DHNA synthase / メナキノン / 生合成 / X線結晶構造解析 / 高度好熱菌 / 結晶中酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、放線菌や高度好熱菌、ピロリ菌等において従来知られていなかったメナキノン(ビタミンK2)生合成経路が新たに発見された。ヒト等は別の生合成経路を持つため、新規メナキノン生合成経路にある酵素群は、ピロリ菌等の病原菌に特異的な阻害剤開発の分子標的になりうると考えられている。そこで、本年度は新規メナキノン生合成経路の酵素の一つであるMqnDのさらなる反応機構の解明を目的として、メナキノン生合成経路酵素MqnD(野生型)結晶中で基質と反応させた後に、X線結晶構造解析による立体構造解析を行った。 T. thermophilus HB8由来のMqnDを大腸菌BL21Star(DE3)株を用いて大量発現し、熱処理による粗精製や各種カラムクロマトグラフィーにより、精製タンパク質溶液を得た。これを用いてハンギングドロップ法により結晶化し、結晶ドロップ中に基質cDHFLを加えることで結晶中で反応を進行させた。その後、結晶を液体窒素で凍結し、KEK放射光科学研究施設(Photon Factory)においてX線回折測定を行い、分子置換法により立体構造解析を行った。その結果、従来から同定されていた1,4-dihydroxy-6-naphthoateの電子密度が確認され、確かに結晶中で酵素反応が進行することがX線結晶構造解析により確認された。その他に、X線結晶構造解析の過程で解釈に時間を要する未解明の電子密度を発見した。このことは新奇な予想を超える結果につながる可能性が高いため、当初計画より研究期間を1年間延長し、さらに慎重を期して詳細な実験や解析を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で第一目標としていた高度好熱菌由来 MqnD-基質複合体の立体構造解析に成功し、MqnDの酵素反応機構に関する新たな知見が得られたこと、さらに今回、MqnD(野生型)結晶中で基質と反応後にX線結晶構造解析を行ったところ、予想以上の結果につながる可能性のある結果を得たことより、おおむね順調に研究は進展していると考えられる。また、ピロリ菌由来MqnDの立体構造解析を目指して、既にピロリ菌MqnDの大量発現系も構築済みで、精製条件を検討中で、今後のさらなる研究発展に向けた準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、MqnD(野生型)結晶中で基質が反応した後に、X線結晶構造解析で発見された未解明の電子密度をさらに詳細に解析した後、これまでのMqnDのX線結晶構造解析及び反応機構に関する研究結果をまとめて、学術論文として国際誌上で報告する。 さらに、解析したピロリ菌MqnDの立体構造を利用して、in silico及びin vitro阻害剤結合スクリーニングを行い、structure-based drug discoveryやfragment-based drug discoveryの手法等も利用して、抗菌剤リード化合物開発への応用を目指す。
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Causes of Carryover |
H26年度に発見した未解明の電子密度について、さらに詳細な実験や解析を行うために、経費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、さらに慎重を期して酵素反応機構解明のためのX線結晶構造解析と生化学実験、及びシンポジウム・学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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