2012 Fiscal Year Research-status Report
セリンアミノペプチダーゼを基盤とした新たな生体触媒の創出
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24780103
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
有馬 二朗 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80393411)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アミノペプチダーゼ / ジペプチド / アミノリシス / 基質特異性 / アシル受容体 |
Research Abstract |
活性中心にセリンを有するペプチダーゼは、稀に加水分解と拮抗してアミノリシスを触媒し、その反応の簡便性からペプチド合成への利用展開が高く見込まれる。本研究では、アミノリシスを示すアミノペプチダーゼ(AP)に焦点を当て、水溶液中で単純なアミン類から様々なペプチド類縁体の合成を可能とする酵素分子のデザインと、新たな“合成酵素学”の観点に基づいた簡易かつ広範なケミカルライブラリー構築の実現を目的とした。 我々は性質の異なる数種のAPを所有し、中でもfamily S9、S12、P1のAPを利用して既知の生理活性ジペプチド合成を実現してきた。簡易かつ広範なケミカルライブラリー構築の実現には、効率的かつ幅広い基質に対するアミノリシス触媒能が必要である。初年度では、family S9、S12、P1のAPにおけるアシル受容体の網羅と、基質認識に関わる残基の特定、機能解析を行った。 アシル受容体の網羅的研究の結果、family S9のAPでは、アシル受容体として利用出来る化合物は疎水及び塩基性アミノ酸エステルにとどまったが、family S12とP1のAPではアミノ酸エステルに加え、単体のアミノ酸、アルキルアミン、アミノアルコール類もアシル受容体として認識した。しかし、変換率は基質によって異なり、多いもので80%以上、少ないもので4%未満であった。一方で、各酵素のアミノリシス反応性と基質特異性に重要な残基を予測するため、結晶化に試みた結果、family S12酵素において8面体結晶が得られた。これについては今後X線回折試験を行う予定である。一方で、他の酵素については活性中心のSerをCysに置換し、そのアミノリシス機能への影響を調べた。その結果family P1のAPにおいて、顕著なアシル受容体特異性の改変が見られた。また、family S9のAPは、酸化による基質特異性の変化も観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において、酵素が反応できる基質の網羅と変異解析を介した酵素の機能残基の同定が初年度における計画であり、研究実績の概要に示したよう、基質の網羅解析はほぼ終了し、酵素の機能改変研究に向け、様々な残基の機能における情報が取得された。この研究の中で、特にfamily P1のAPにおいては活性中心のセリン残基をシステインに置換することで、大きくアシル受容体の特異性が変化し、合成できるペプチドのバリエーションが増大した。これは、本プロジェクトの最終目標である「機能物質探索に寄与できる、より強力な生体触媒の創出」の実現に向け、大きく前進したことになる。まだ、酵素機能学的に未解明な部分の存在し、また合成酵素学として生産に応用するには多くの課題を残すところである。これらは次年度に解決に向けた研究を行う予定であり、さらにはこのような課題から新たな研究テーマが創出されるものであると認識している。従って、以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、3つのAPを対象にアシル受容体の網羅的解析と機能残基の推定を行った。今後の研究については、基質特異性拡大とアミノリシス活性増強に向け、それぞれの酵素で異なる実験戦略をとる。それぞれを以下の箇条書きにて示した。 ○family S9のAP:実績の概要で述べた通り、本酵素は酸化することで、基質特異性が変化することが明らかとなった。そこで、本酵素を人為的に酸化し、MALDI-TOF MS解析による酸化部位マッピングを行う。本作業を通し、酸化される残基と基質特異性への影響との関連性を調べ、特に影響を及ぼす残基や領域については、サチュレーション変異導入法により様々な特異性を有する酵素の創生に試みる。 ○family S12のAP:初年度の研究において結晶が得られたため、X線結晶構造解析を行い、基質(アシル受容体)認識に関わる残基の抽出作業を行う。なお結晶は、アシル受容体候補分子を添加剤として加えた時にのみ生成されるため、構造解析によりアシル受容体と相互作用する残基の同定が見込まれる。 ○family P1のAP:本酵素は活性中心の変異により、アシル受容体認識が大きく変化することが、初年度の研究によって明らかとなった。次のターゲットはアミノリシス活性向上に向けた研究を行うため、野生型酵素と活性中心の変異酵素を対象に、周辺残基の機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)