2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高田 晃 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10332701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジャスモン酸ミミック / 抽だい |
Research Abstract |
ダイコンやチンゲンサイなどの一年生作物は茎の短いロゼッタ形で冬を乗り越えた後、花芽の形成とともに茎を急激に伸ばす(抽だい)。これら作物を春早くに栽培すると、春先の低温に呼応して不時抽だいが起こる。抽だいした作物は商品価値がなくなるため、それを回避する抽だい抑制剤の開発は農業上重要な課題といえる。一方、抽だいや花芽形成の調節機構を物質レベルで解明することは学術的にも重要である。 このような背景の下、本年度は16種類のジャスモン酸ミミックを合成し、チンゲンサイへの抽だい抑制効果とともに、葉の老化や魚毒性などの農薬として除外すべき副作用の有無についても調べた。その結果、3-イソ-ククルビン酸メチルエステルが散布実験によって、抽だいを完全に抑制する事が分かった。また、本剤を散布した植物は茎の伸長ばかりではなく、花芽の形成も抑制された。一方、葉の老化や魚毒性などの副作用は全く検出できなかった。よって、本剤は副作用を極限まで減らしつつ、花芽形成と抽だいの双方を抑制することができると結論付けた。また、ジャスモン酸は植物に対し様々な生理活性を示すが、その要求される化学構造は活性の種類によって異なることが分かった。植物はジャスモン酸の多様な認識機構を有していると思われる。このように、本年度は抽だい阻害剤として有望なジャスモン酸ミミックを見出すとともに、抽だい・花芽形成・老化の構造活性相関に関する情報を得ることができた。本研究の成果は現在、論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的なゴールはジャスモン酸ミミックを利用した学術的、農業的展開である。本年度はジャスモン酸ミミックの合成し、その抽だい抑制剤への展開を試みた。前述の観点から言えば、チンゲンサイの抽だいと花芽形成を抑制し、かつ、農薬として除去しなければならない副作用(葉の老化、毒性)がないジャスモン酸ミミックを見出すことができたので、想定どおりの達成度に到達したと考えている。今後も、ジャスモン酸ミミックを利用した学術的および農業的応用研究を継続していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
以前の研究からジャスモン酸あるいはその関連化合物がタマネギの肥大やダイコンの抽だいなどの農業上重要な植物生理機能をコントロールしている事が分かりつつある。その機構を解明するためには、その生理機能をコントロールしているジャスモン酸の詳細な化学構造を知らなければならない。現在までに植物の傷害ストレス応答機構は、ジャスモン酸イソロイシンとその受容体ならびにシグナル伝達の詳細を知る事で明らかになりつつある。一方、その他のジャスモン酸の作用機構はよく分かっていない。そこで、今後は本研究の対象とする生長現象がジャスモン酸イソロイシンを介さないシグナル伝達で調節されている事を示すとともに、ジャスモン酸ミミックを利用して、その活性本体の構造情報を引き出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度繰り越した研究費と次年度の研究費の一部を合わせて、低温恒温水槽(約80万円)の購入を検討している。本装置の導入によりジャスモン酸ミミックの合成研究を加速できると期待している。
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Research Products
(2 results)