2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780107
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高田 晃 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10332701)
|
Keywords | ジャスモン酸ミミック / 抽だい |
Research Abstract |
ダイコンやチンゲンサイなどの一年生作物は茎の短いロゼッタ形で冬を乗り越えた後、花芽の形成とともに茎を急激に伸ばす(抽だい)。これら作物を春早くに栽培すると、春先の低温に呼応して不時抽だいが起こる。抽だいした作物は商品価値がなくなるため、それを回避する抽だい抑制剤の開発は農業上重要な課題といえる。一方、抽だいや花芽形成の調節機構を物質レベルで解明することは学術的にも重要である。 このような背景の下、昨年度までジャスモン酸ミミックを合成し、副作用を示すことなく抽だい抑制効果(チンゲンサイ)を示す3-イソ-ククルビン酸メチルエステルの開発に到達した。本年度は本剤の立体異性体を化学合成するとともに、ダイコン幼植物に対する抽だい阻害効果を検討した。その結果、その活性に強弱はあるもののいずれの立体異性体も抽だい阻害活性を示すことが分かった。一般に低分子生理活性物質の受容体は極めて厳格な構造要求を示すことを考えると、本研究が何を意味しているのか非常に興味深い。今後、光学不斉も考慮に入れたジャスモン酸ミミックレパートリーの充実を図り、本剤の受容体に関する構造情報の蓄積を継続する。さらに、水耕栽培法を利用して育成したダイコン植物体(春化処理済)への散布実験の結果、抽だいを葉の委縮などの副作用を引き起こすことなく抑制できることが分かった。抽だいを抑制されたダイコン植物体において、花芽形成が観察された。抽だいと花芽形成を分離できた可能性がある。これに関しても検討を続けたい。これまでの成果はTetrahedron誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的なゴールはジャスモン酸ミミックを利用した学術的、農業的展開である。本年度は新たにジャスモン酸ミミックのレパートリーを増やし、農業上重要なダイコン植物体に対する抽だい抑制効果を明らかにできた。さらに、ダイコンの農業的問題点(不時抽だい)を模した条件下においても、本剤が有効であることを示すことができたので、想定通りの達成度に到達したと考えている。 今後も、ジャスモン酸ミミックを利用した学術的および農業的応用研究を継続していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
以前の研究からジャスモン酸あるいはその関連化合物がタマネギの肥大やダイコンの抽だいなどの農業上重要な植物生理機能をコントロールしている可能性が指摘されている。その機構を解明するためには、その生理機能をコントロールしているジャスモン酸の詳細な化学構造を知らなければならない。 今後はジャスモン酸ミミックを利用して、基礎ならびに応用両面から植物生理機構の解明を目指したい。具体的には光学不斉も考慮に入れたジャスモン酸ミミックレパートリーのさらなる充実とそれを利用した構造活性相関研究を進めたい。また、生合成阻害剤を利用した作用機構研究にも引き続き取り組みたい。
|