2012 Fiscal Year Research-status Report
メタボリック症候群発症に関わる腸間膜脂肪細胞の機能解析と食品成分によるその制御
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24780118
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠木 亜季 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (60589208)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腸管膜脂肪細胞 / メタボリックシンドローム / アディポサイトカイン |
Research Abstract |
肥大した内臓脂肪細胞における遊離脂肪酸(NEFA)やアディポサイトカインの分泌異常がメタボリック症候群の発症に関わると報告されている。これまでの研究により、内臓脂肪である腸間膜脂肪細胞の小腸側と大腸側においてNEFA分泌能が異なることを見出したが、その詳細な機構は明らかではない。そこで本年度は腸間膜脂肪細胞の小腸側と大腸側において機能の差異を解析するために下記のとおり解析を実施した。 腸間膜脂肪組織を含めた内臓脂肪組織間での機能の差異を検討するために、腸間膜脂肪組織の小腸側と大腸側、副睾丸周囲脂肪組織、および後腹膜脂肪組織を用いた。各組織を分離し、脂肪細胞の部位による生理的応答の違いを比較した結果、NEFA分泌は大腸側腸間膜脂肪細胞で最も高いことが示された。腸間膜脂肪細胞において脂肪分解を促進する刺激因子に対する生理的応答の違いを比較した結果、いくつかの刺激因子が脂肪細胞からのNEFA分泌を促進することが示された。また、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの変動を小腸側と大腸側腸間膜脂肪細胞において解析した。これらの解析により、脂肪細胞における生理的応答は脂肪の部位および刺激因子の応答性に影響を受け、また、腸間膜脂肪組織では小腸側と大腸側腸間膜脂肪細胞間の機能的な差異が示唆された。 そこで、小腸側と大腸側腸間膜脂肪細胞の機能の差異をもたらす因子の解析をするために、ラットより採取した小腸側と大腸側の腸間膜脂肪細胞を用い、DNAマイクロアレイによる網羅的比較を行った結果、炎症性サイトカインおよび転写因子の発現に違いがあることを見出した。現在この候補因子が小腸側および大腸側脂肪細胞の差異に与える影響を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、メタボリック症候群発症に関わる内臓脂肪である腸管膜脂肪組織の小腸側と大腸側脂肪細胞における差異をもたらす機構を明らかにすることを目的としている。本年度はこの目的を達成するために、以下に関して検討した。 ・腸間膜脂肪組織を含めた内臓脂肪組織間における機能および生理的応答の差異を検討した。 ・小腸側と大腸側の腸間膜脂肪細胞において機能の差異をもたらす因子を解析するために、DNAマイクロアレイによる網羅的比較を行った。 上記の解析により、本年度に研究実施計画していた小腸側と大腸側腸間膜脂肪細胞の発現分子および生理機能の差異を解析することができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で小腸側と大腸側の腸間膜脂肪細胞を用い、DNAマイクロアレイによる網羅的比較を行った結果、炎症性サイトカインおよび転写因子の発現に違いがあることを見出した。今後、この見出された候補因子についてさらに詳細な解析を進め、この因子が小腸側および大腸側脂肪細胞の差異に与える影響を解析する。この解析を遂行するにあたり世界で先駆的な研究を行っているグループの協力が必要となった。そのため現在、このグループが所属する海外の研究機関に協力を呼びかけ本研究を遂行していく計画である。今後さらなる腸管膜脂肪由来の因子解析により小腸側と大腸側の腸間膜脂肪細胞における差異を特定することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するにあたり備品の購入は予定していない。 消耗品としては、主に遺伝子解析用試薬、ウエスタンブロッティング用試薬、抗体、アディポサイトカイン測定のためのELISAキットなどの購入を計画している。また、実験動物としてのラット及びその飼育に関わる飼料成分の購入などを予定している。 旅費としては、研究を遂行するにあたり海外の研究機関から協力を得るための外国旅費としての支出を予定している。
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