2012 Fiscal Year Research-status Report
学習・記憶障害の抑制効果を持つカフェオイルキナ酸の有用性の解明
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24780121
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
ハン ジュンギュ 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40455928)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー症予防 / 抗老化 |
Research Abstract |
本研究は「食品成分であるカフェオイルキナ酸の学習・記憶障害抑制に関する有用性を解明し、食品成分によるアルツハイマー型認知症予防の可能性の提案」を目的とし、アルツハイマー症の細胞モデルと動物モデルを用いてその作用メカニズムを明らかにする。 平成24年度の研究計画では、神経細胞を用いたin vitro実験を中心に①アミロイドベータとグルタミン酸併用処理による神経細胞損傷モデルの作成、②カフェオイルキナ酸の神経細胞NMDA受容体への影響、③網羅的パスウェイの解明が可能なプロテオミクス手法による作用機序の解析を行う予定で研究を進めた。その結果、アミロイドベータとグルタミン酸(5mM)併用処理により、既存のアミロイドベータ単独処理での毒性誘導濃度であった10~20μMより低い濃度であるミロイドベータ濃度3μMにおいて神経細胞損傷モデルの構築に成功した。さらに、構築した神経細胞損傷モデルを用いてカフェオイルキナ酸の神経細胞保護効果を調べた。その結果、カフェオイルキナ酸濃度5、10、15、20μMにおいて濃度依存的神経細胞保護作用を見出した。構築した神経細胞損傷モデルにおけるカフェオイルキナ酸の神経細胞保護効果の作用メカニズム解明を行うため、平成24年度計画ではプロテオミクス手法による解析を行う予定だったが、タンパク質同定に必要なLC/MS/MS装置の故障により、遺伝子レベルの網羅的メカニズムの解明が可能なマイクロアレイ手法に変更した。その結果、アミロイドベータとグルタミン酸併用処理により神経細胞損傷モデルにおけるカフェオイルキナ酸の神経細胞保護メカニズムとしては、細胞内アミロイドベータ産生に関わる遺伝子(SCPEP1など)、細胞内酸化ストレス関連遺伝子(SOD1、NQO1、MT2A、HSPA1Aなど)、細胞周期制御関連遺伝子(NQO2、MALAT1など)が関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的としては、①神経細胞傷害に対する作用:「In vitroレベルでは、神経細胞を用いてカフェオイルキナ酸の学習・記憶障害(細胞モデル)に対する有効性及びその作用機序を明らかにする。アルツハイマー症の原因物質である「アミロイドベータ」や「グルタミン酸」が引き起す神経細胞傷害におけるカフェイオイルキナ酸の神経細胞保護の影響やその作用機序を分子生物学手法にて明らかにする。」と②老化促進モデルマウスの学習・記憶障害に関する作用機序:「In vivoレベルでは、老化促進モデルマウスにおけるカフェイオイルキナ酸の学習・記憶障害抑制効果の作用機序を明らかにするため、老化促進モデルマウス脳の海馬を用いてカフェオイルキナ酸の学習・記憶の長期増強形成障害に対する影響やその作用機序を明らかにする。」と③カフェオイルキナ酸の新しい機能の提案:「食品成分であるカフェオイルキナ酸の学習・記憶障害抑制効果に関する有用性について新しい知見を得ることが期待される。」である。 平成24年度では研究目的①である「神経細胞障害に対する作用」を、アミロイドベータとグルタミン酸処理による神経細胞損傷モデルを作成し、カフェオイルキナ酸による神経保護作用を見出した。さらに、マイクロアレイ手法により、カフェオイルキナ酸による神経保護作用のメカニズムを明らかにした。研究目的②と③においては、平成25年度のアルツハイマー症モデルマウスを用いたin vivo実験により、明らかにしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、老化促進モデルマウスを用いたin vivo実験を中心に行う。カフェイオイルキナ酸を経口投与し、老化促進モデルマウスの脳、特に学習・記憶能を制御する器官である海馬を対象に下記4つの実験を行う。 ①「老化促進モデルマウスの海馬におけるNMDA受容体の発現及び局在の変化について」;In vivoレベルにおけるカフェイオイルキナ酸の学習・記憶の長期増強形成障害抑制に及ぼす影響を明らかにするため、カフェオイルキナ酸を30日間経口投与した老化促進モデルマウス群や非処理老化促進モデル群及び正常マウス群から脳を摘出し、ミクロトームにて海馬の切片を作製する。NMDA受容体の抗体を用いた海馬切片の免疫染色を行い、海馬の各領域におけるNMDA受容体の発現及び局在に対するカフェオイルキナ酸の影響をin vivoレベルで調べる。②プロテオミクス手法によるin vivoレベルでの作用機序の解析について;カフェオイルキナ酸の学習・記憶障害抑制効果における作用機序を明らかにするため、網羅的なタンパク質の発現変動を調べることが可能なプロテオミクス手法を用いて調べる。二次元電気泳動にて大型ゲルを作成し、カフェオイルキナ酸経口投与により発現が変化したスポットはLC/MS/MSにてタンパク質の同定を行う。③マイクロアレイ手法によるin vivoレベルでの作用機序の解析について;カフェオイルキナ酸の学習・記憶障害抑制効果における作用機序を明らかにするため、網羅的に遺伝子の発現変化を調べることが可能なマイクロアレイ手法を用いて調べる。④In vivoレベルでのカフェオイルキナ酸の安全性について;正常マウスにカフェオイルキナ酸を経口投与し、非投与正常マウス群との比較を行う。カフェオイルキナ酸安全性を調べるため、マウスの一般症状・行動に及ぼす影響を体重測定、姿勢反応、常時行動、拳尾反応などで確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、老化促進モデルマウス(40匹)&正常マウス(40匹)を最初購入し、マウス実験を行う。実験後はマウスの脳を取り出し、ミクロトームにて脳切片を作成する。免疫染色用試薬を購入し、特定タンパク質の染色を行う。さらに、プロテオミクス用試薬とマイクロアレイ用試薬を購入し、脳から抽出したタンパク質やTotal RNAを用いて網羅的メカニズムの解明を行う。本研究により得られた研究成果に関しては国際学会にて発表を行う予定である。
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