2013 Fiscal Year Research-status Report
物理的性状変化を制御した食品加工操作による低水分系澱粉含有食品の高付加価値化
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24780129
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川井 清司 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00454140)
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Keywords | 澱粉 / 融解 / ガラス転移 / 食品加工 / 食品構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、低水分系澱粉含有食品を結晶質と非晶質とが混在した半結晶質複合材料として捉え、原料の加熱過程における物理的性状変化を制御することで、品質を維持しつつ機能性を付与する高付加価値化加工操作を明らかにすることである。昨年度はクッキーを題材とし、焼成過程における澱粉の融解と消化抵抗性澱粉含量およびマウスにおける食後血糖値のピーク値低下との関係を明らかにした。本年度はクッキーの品質制御に焦点を絞り、研究を進めた。 クッキーのサクサクとした食感はクッキーがガラス状態にあることによって生じるものと理解されており、そのガラス転移温度を制御することで品質を設計することが可能と考えられる。また、クッキーのガラス転移温度は特に少糖によって支配的であることが知られている。そこで、組成が異なる様々な少糖混合物を用いて昨年度と同様にクッキーを調製し、そのガラス転移温度の水分含量依存性を自作の熱機械測定によって調べた。その結果、クッキーに配合した少糖のガラス転移温度が高いほど、クッキーのガラス転移温度も高くなる傾向が認められ、両者の間に相関関係を見出すことができた。少糖混合物のガラス転移温度は経験式を用いた計算によって予測することができる。本研究成果により、既往の予測式をクッキーの食感制御に展開することが可能となった。 一方、クッキーの食感はその骨格の物理的性状だけでなく、多孔質な内部構造によっても影響するものと考えられる。そこで、本年度は更に、加工操作がクッキーの多孔質構造に及ぼす影響について調べた。その結果、クッキーの多孔質構造は骨格の硬さや焼成過程における水蒸気圧と関連づけられることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ期待する通りの成果が得られており、論文発表や学会発表も定期的に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度ではこれまでの成果を総括するための研究を行う必要があると考えている。前年度においてクッキーの初期水分含量が澱粉の融解を支配し、それが消化抵抗性澱粉含量やマウスにおける食後血糖値のピーク値低下と関係することを明らかにした。この際、クッキーの初期水分含量の調製には減圧乾燥を用いたが、実際のクッキー製造においてこのような操作が行われることは無い。そこで実用的観点から、澱粉の融解温度以下に焼成温度を設定する加工方法について検討を進める。更に、これまでに得られたクッキーの多孔質構造やガラス転移温度に関する知見を利用し、各種食品成分の物理的性状変化と品質並びに機能性との関係を定量的に考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
適切な使用を行った結果、不可避な少額の残高が生じた。 平成26年の予算と合わせて、研究の進展に応じて適切に使用する。
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Research Products
(9 results)