2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 充 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70584209)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 相乗効果 / 血管弛緩作用 / ペプチド / ポリフェノール |
Research Abstract |
本研究ではこれまで、L型Ca2+チャンネル阻害作用を有する低分子ペプチドTrp-His(WH)の血管弛緩作用が、血管弛緩性ポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(EGCg:300 μM)により相乗的に増強される(約6倍の活性増大)ことを明らかとしてきた。そこで本年度は、さらなる相乗性成分の探索とWHとEGCgとの相乗的血管弛緩作用発現に関わるメカニズムの解明を試みた。 8-11週齢雄性SD系ラット由来胸部大動脈血管を用いて、1 μM フェニレフリン収縮血管における張力測定を実施した。WHの血管弛緩作用を加速する成分の候補として、血管弛緩性低分子ペプチドであるカルノシン、Met-Tyr、His-Arg-Trp、His-Trp及びVal-Tyr、血管弛緩性ポリフェノールとしてルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、プロシアニジンB2及びプロシアニジンC1を用いた。その結果、 ケンフェロール (15 μM)及びケルセチン(15 μM)存在下においてWHの弛緩作用の増大が認められた。このことから、EGCgの他にも相乗効果を示す食品成分が存在することが明らかとなった。 次に、WH及びEGCgの相乗的弛緩作用のメカニズムの解明を試みた。EGCgとの相乗的血管弛緩作用は、内皮除去血管において完全に消失することが明らかとなった。また、eNOS阻害剤(L-NMMA:100 μM)あるいは可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害剤(ODQ:10 μM)存在下においても、本相乗作用の完全な消失が認められた。さらに、WH処理血管におけるNO産生量は、EGCg添加により有意に増大することが明らかとなった。このことより、本相乗作用には血管内皮由来のNO/cGMP系シグナルが関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度計画であるEGCgとTrp-HisのWHの相乗的血管弛緩作用の解明については、血管内皮を起点とするNO/cGMP系シグナルがWHによる血管弛緩作用の増大に起因することが明らかとなった。さらに、様々な血管弛緩性天然成分のとの併用効果を検討し、血管弛緩作用における食相乗性はEGCg/WH以外の組み合わせにおいても十分発現可能であることが明らかとなった。このことは、次年度以降のさらなる併用試験を実施することで、より強力な相乗効果発現の発見及び新たな相乗効果発現メカニズムの可能性を期待させる知見であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで明らかとなっている相乗効果を発現する組み合わせについてのメカニズムの解明及びさらなる相乗効果を発現する組み合わせについての検討を行う。さらに、血管の健康状態(動脈硬化の様な炎症状態及び週齢(老化状態)の影響)に対する食品成分併用効果を検証する。血管の炎症状態については、TNF-alphaにより誘導した炎症状態に対する併用効果を検証する。また、血管の老化状態の検証には、若齢(4 wk)、中齡(18 wk)並びに老齢(35 wk)の高血圧自然発症ラットより摘出した大動脈血管を用いて、血管弛緩性成分の併用効果を検証する。これら血管の健康状態の影響については、相乗効果のみならず、それぞれの疾病状態(炎症あるいは老化)のステージに生理作用(健康状態の悪化した血管に対してだけ、改善作用示す様な特異性)についても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに明らかとした血管弛緩性食品成分の相乗効果について、さらなる組み合わせ及び新たなメカニズムの解明を試みる。それに伴い、各種ペプチドの合成に関わる試薬、ポリフェノール並びに血管張力試験に必要な試薬類及びSprague-Dawleyラットが必要となる。さらに、メカニズムの解明においては、各種血管弛緩関連シグナルに関わる因子の測定のためのEIAキット、プレート及びLC-MS用消耗品(カラム、溶媒、誘導体試薬等)が必要となる。加えて、血管の健康状態の影響評価において必要な各種ラット(SHR及びWKY)並びに炎症誘導因子(TNF-alpha等)が必要となる。また、血管の健康状態評価並びにその作用機構解明においてRT-PCR法及びWestern blot法を用いる必要が想定されるため、それら測定に関わる試薬類も必要となると考えられる。
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