2013 Fiscal Year Research-status Report
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24780130
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 充 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70584209)
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Keywords | 相乗効果 / 血管弛緩作用 / フェルラ酸 |
Research Abstract |
本研究ではこれまで、動脈硬化予防低分子ペプチドTrp-Hisの血管弛緩作用が、血管弛緩性ポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(EGCg:300 μM)により相乗的に増強される(約6倍の活性増大)ことを明らかとしてきた。また、本作用には、血管内皮由来のNO/cGMP系シグナルが関与することを明らかとしてきた。そこで、今年度は当該相乗的血管弛緩作用を炎症血管において評価し、炎症状態において機能発現する食品成分混合系の探索を試みた。まず、炎症誘導性サイトカインであるTNF-αを用いて誘導した炎症血管において、Trp-HisとEGCgとの血管弛緩作用を評価したところ、正常血管において認められた相乗的血管弛緩作用は、炎症血管において明らかに減弱することが明らかとなった。そこで、抗炎症作用が報告されている天然フェノール酸であるフェルラ酸を用いて、減弱した弛緩作用に対する影響を評価した。フェルラ酸を更なる併用成分として添加し、Trp-HisとEGCgの混合溶液の弛緩作用を評価したところ、フェルラ酸添加による減弱した弛緩作用の回復が認められた。そこで、当該回復作用に起因する食品成分混合系を明らかとするために、Trp-His及びEGCgのそれぞれの弛緩作用に対するフェルラ酸の作用を評価したところ、フェルラ酸は、炎症血管においてのみEGCgの血管弛緩作用を有意に増強することが明らかとなった。さらに、本炎症血管特異的な増強効果は、血管内細胞におけるNO産生系の増大に起因することを明らかとした。従って、フェルラ酸は、炎症血管において減弱したEGCgによるNO産生作用を回復させることで、炎症血管特異的な相乗効果を発現する成分であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、血管の健康状態が相乗的血管弛緩作用に与える影響を明らかとするために、TNF-α誘導性炎症血管を用いて、食品成分併用時における血管弛緩作用を評価し、炎症血管特異的に相乗効果を発現する食品成分として新たにフェルラ酸を見出した。本フェルラ酸は、正常血管においては作用を及ぼさないことから、これまでにない機能性食品素材として活用や、新たな生理機能発現メカニズムの可能性が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、これまで明らかとしてきたフェルラ酸の炎症特異的な生理作用発現メカニズムの解明を行う。本作用は炎症血管において減弱した内皮由来のNO産生能を回復させることから、血管内皮細胞を用いて当該作用メカニズムの解明を実施する。また、若齢(4 wk)、中齡(18 wk)並びに高齢(35 wk)の高血圧自然発症ラットを用いて、炎症血管においての食品成分混合系の生理作用発現をin vivoモデルにおいて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度において見出された炎症特異的な血管弛緩作用の発現メカニズムを標的分子レベルで明らかとするために、血管内皮細胞を用いた検討が必要となるため。 平成25年度において明らかとしたフェルラ酸の炎症血管特異的な弛緩作用の発現メカニズムを血管内皮細胞を用いて解明するために、細胞培養に関する培地、ポリフェノール類(フェルラ酸等)、炎症誘導のためのTNF-α、プレート等の消耗品、阻害剤や抗体、LC-MS用消耗品等が必要となる。さらに、in vivoモデルでの検証を行うための動物(SHR, SDラット等)及びそれらの飼育に係る消耗品も必要となる。
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Research Products
(3 results)