2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780134
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋崎 要 日本大学, 薬学部, 助教 (60318459)
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Keywords | レシチンオルガノゲル / 逆紐状ミセル / 食用油 / 植物油 / トリグリセリド / レオロジー |
Research Abstract |
平成24年度には、各種レシチンオルガノゲル化剤を用いて、中鎖飽和脂肪酸を有するトリアシルグリセロールのゲル化に成功している。 平成25年度は、不飽和脂肪酸を有するトリアシルグリセロールのゲル化を目指し、各種植物油のゲル化について検討を行った。レシチンオルガノゲル化剤には、レシチン+1,2,3-プロパントリカルボン酸の組み合わせを用いた。また、植物油には脂肪酸組成の異なる、大豆油(リノール酸53.5%、オレイン酸23.5%、パルミチン酸10.6%、α-リノレン酸6.6%、ステアリン酸4.3%他)ならびに菜種油(オレイン酸62.7%、リノール酸19.9%、α-リノレン酸8.1%、パルミチン酸4.3%他)を用いた。その結果、いずれの植物油を用いた場合にも相分離が生じ、ゲル化は起こらなかった。さらに、不飽和脂肪酸としてオレイン酸を有するトリオレイン(純度80%以上)を用いて検討したが、植物油を用いた場合と同様にゲル化は起こらなかった。これらの結果から、ゲル化が起こらなかった理由を二通り考えた。まず一つ目は、植物油中に含まれる微量成分の影響である。植物油には、主成分であるトリアシルグリセロール以外に、フィトステロール、トコフェロール、γ-オリザノール等が微量含まれる。これらの微量成分は、構造中にいずれも水酸基を有するため、レシチンのリン酸基に結合している1,2,3-プロパントリカルボン酸と競合し、逆紐状ミセルの形成を阻害している可能性がある。また、トリオレイン中に含まれるオレイン酸やグリセリンも同様に逆紐状ミセルの形成を阻害すると考えられる。この場合、これらの微量成分の影響を受けにくいゲル化剤の探索が必要となる。二つ目の可能性は、不飽和脂肪酸そのものをゲル化しにくい可能性である。この点に関しては、現在、オレイン酸エチルおよびリノール酸エチルを用いて検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、幾つかのレシチンオルガノゲル化剤を用いて、中鎖飽和脂肪酸を有するトリアシルグリセロールをゲル化できたことは新たな発見である。一方、不飽和脂肪酸を有するトリアシルグリセロールのゲル化は成功していないが、その原因は明らかになりつつあり、レシチンオルガノゲル化剤の最適化によってゲル化を達成できる可能性は十分あるものと考えられる。よって、現時点では、当初掲げた目標を概ね達成できているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、液状の食用油をゲル化するための新規技術を開発することを目的としており、最終的には、レシチンオルガノゲル化剤による植物油(大豆油や菜種油等)の固形化を目指す。本年度の検討結果から、食用油中に含まれる微量成分(フィトステロール、トコフェロール、γ-オリザノール等)が、逆紐状ミセルの形成を阻害している可能性が示唆された。そこで、今後は植物油中に含まれる各種成分のゲル化に及ぼす影響を明らかにし、この知見を元にレシチンオルガノゲル化剤の最適化を行う。また、引き続き新規なレシチンオルガノゲル化剤の探索も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた国際学会(246th ACS National Meeting & Exposition)への参加を取り止め、国内学会(日本薬学会第134年会)に変更したため。 【消耗品費】ゲル化剤(例えば、レシチン、クエン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、D-リボース)、オイル(例えば、植物油、エチルエステル油)などの試薬が570,000円、レオメーターなどの分析機器の消耗品として300,000円、論文別刷代として50,000円を使用する予定である。 【旅費等】American Chemical SocietyのACS National Meetings & Expositionに参加して成果を発表するため、外国旅費として300,000円、日本薬学会第135年会に参加して成果を発表するため、国内旅費として100,000円を使用する予定である。また、国際誌に論文を投稿するので、英語論文の校閲として50,000円、論文投稿料として、50,000円を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)