2012 Fiscal Year Research-status Report
新規シス/トランス異性体分離法の開発とそれを利用したトランス脂肪酸の高精度分析
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24780138
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 真輔 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (70423837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 食品分析 / 脂肪酸 / ガスクロマトグラフィー / 質量分析 / 誘導体化 / メチルエステル化 / 幾何異性体(シス-トランス異性体) |
Research Abstract |
ガスクロマトグラフィー(GC)による脂肪酸の分析の際には現状ではメチルエステル化による誘導体化が圧倒的に使用されている。しかしながら,この方法では検出器として化学構造の同定能力に優れる質量分析計(MS)を用いても,不飽和脂肪酸の二重結合の位置まで特定することは困難である。そこで,メチルエステル化に替わる誘導体化法で構造・幾何異性体のGCによる分離に優れかつMSによる構造の同定にも寄与する方法の開発に取り組んだ。さらには,食品試料中の脂肪酸の精確で迅速な分析法の開発に取り組んだ。 得られた結果としては,研究代表者がこれまでに開発したエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)測定において検出感度および同定能力を向上させるための誘導体化法を用いたところ,今回の測定対象が得られた誘導体の揮発性の問題から測定の際にカラム温度をその限界付近まで上昇させねばならないことが明らかとなり,良好な分離を得るといった観点からはさほど効果的ではなかった。一方で,ジメチルオキサゾリン化を適用したところ,誘導体化反応に長時間要することや異性体間の分離度がやや減少するといった欠点はあるものの,MSによる構造の同定が容易であり,カラム温度の問題は生じないことが確認された。 また,分離に使用するカラムの液相として,現在よく使用されているシアノプロピルポリシロキサンに加え,高極性イオン液体のものもまた有効であることを見出すことができた。さらには,高速GCを活用することやオンカラム誘導体化試薬を組み合わせて用いることにより,食品中に含まれるトランス脂肪酸分析の公定法(AOCS試験法や基準油脂分析試験法など)の迅速化について一定の成果を得ることが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にGCにより脂肪酸を分析するための従来のメチルエステル化法に替わる新規誘導体化について検討を行い,さらには迅速で正確な分析法の開発を目指し,一定の成果を得ることができた。具体的には,GCにより分離に使用するカラムの液相として,現在よく使用されるものに加え,イオン液体のものもまた有効であることを見出すことが可能であった。さらには高速GCおよびオンカラム誘導体化試薬を利用した公定法の迅速化そしてハイスループット化について一定のめどをたてることができた。 しかしながら,メチルエステル化法に替わる誘導体化法として当初計画していたピロリジン化やピコニルエステル化などの方法,さらには研究代表者がこれまでに開発したESI-MS測定用の誘導体化法では,今回の測定対象が比較的長鎖の脂肪酸であることもあり,揮発性の問題から測定の際にカラム温度をその限界付近まで上昇させねばならず,GCの分離にさほど効果的でなかったのは誤算であり,大きな課題として残った。なお,ジメチルオキサゾリン化を適用したところ,誘導体化に長時間要することや異性体間の分離度がやや減少するといった欠点はあるものの,MSによる構造の同定が容易であり,カラム温度の問題は生じないことが確認された。このような問題点を解決することができれば,ジメチルオキサゾリン化は有用な手法となるため,引き続き同法の改良などに取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
メチルエステル化法に替わる誘導体化として計画していた方法が当初予想していたほど効果的でなかったのは誤算であったが,一部の手法で可能性を見出していることから,引き続き検討を行い,問題点を1つずつ克服したい。これまでの結果を踏まえ,本年度予定している研究計画である銀イオンクロマトグラフィーや2次元GCによる検討,さらには実試料の大がかりな測定に取り組みたい。なお,既存の公定法のハイスループット化について一定の成果を得ることができたことから,前年度にできなかった学会発表を早期に行い(日本分析化学会あるいは日本油化学会などを予定),また学術論文としてまとめ投稿したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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