2013 Fiscal Year Annual Research Report
新規シス/トランス異性体分離法の開発とそれを利用したトランス脂肪酸の高精度分析
Project/Area Number |
24780138
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 真輔 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (70423837)
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Keywords | 食品分析 / トランス脂肪酸 / クロマトグラフィー / 高速GC / メチルエステル化 / 質量分析 |
Research Abstract |
食品中に含まれるトランス脂肪酸の分析には基準油脂分析試験法(JOCS法)やAOCS法などの公定法が広く用いられているが,これらの方法では試料の前処理(メチルエステル化)およびGC-FIDによる測定に時間を要するといった欠点がある。そこで,本研究では,メチルエステル化法の改良およびメチルエステル化に替わる新規誘導体化法の開発,さらには高速GCを適用することにより,脂肪酸類の測定の大幅な迅速化を目指した。本研究により得られた成果としては,メチルエステル化法を改良することより,室温で約10分反応させるのみでGCへの直接注入が可能な効果的なメチルエステル化剤を見出し,非常に簡便な前処理を実現し,これを高極性イオン液体のカラムを使用した高速GCと組み合わせることで,既存の方法よりも迅速なトランス脂肪酸測定法を開発することに成功した。本研究で開発した高速GC法による定量値は既存の公定法とほぼ同等であり,また,再現性も良好であった。高速GC法における1検体の測定に要する時間は,試料の前処理の操作を含めて30分以内であり,従来の方法と比較して3分の1以下と大幅に時間を短縮することが可能であった。得られたトランス脂肪酸含量について,JOCS法およびAOCS法による値と比較したところ,ほぼ同等の値を得ることが可能であった。これらの結果から,高速GC法は,食品中のトランス脂肪酸分析に有効であり,非常に簡便でかつ信頼性が高い分析法であると判断された。実際に,開発した方法により,国内の市場で流通しているマーガリンやファットスプレッド,ショートニング,サラダ油,ナタネ油,ゴマ油,オリーブ油など様々な食用油脂の市販調査を行った。その結果,トランス脂肪酸含量は過去の報告と比較して明確に減少しており,国内で流通している食用油脂中のトランス脂肪酸の低減化は順調に進行していることが裏付けられた。
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