2012 Fiscal Year Research-status Report
鉄摂取の過不足が肝臓・血液の遺伝子発現に及ぼす影響および安全摂取基準の提唱
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24780139
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
亀井 飛鳥 (財)神奈川科学技術アカデミー, 健康・アンチエイジングプロジェクト, 研究員 (40514112)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 貧血のない鉄欠乏 / 鉄過剰 / DNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
<貧血のない鉄欠乏の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の下限基準の提示> 貧血のない鉄欠乏とは、ヘモグロビンに変化がなく、血中フェリチン低下、TIBC(総鉄結合能)増加が認められる状態である。「生体に悪影響を及ぼす鉄欠乏状態を引き起こす食餌性鉄含量はどの程度か」を明らかにし、鉄所要量の下限基準を提示する目的で実験を開始した。雄性SDラットに対し、鉄含量が標準および欠乏の飼料をそれぞれ与え、3日後に肝臓および血液を採取した。その結果、鉄欠乏食摂取ラットは貧血のない鉄欠乏状態であることが明らかになった。続いて採取した肝臓よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ(GeneChip Rat Genome 230 2.0 Array, Affymetrix)に供し、トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、貧血に至らずとも肝臓は生体内の鉄量の変化に遺伝子発現レベルで機敏に応答することが明らかになった。 <鉄過剰摂取の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の上限基準の提示の研究> 鉄は、臓器中に過剰に蓄積されることで臓器に傷害を与える。様々な傷害の低減のためには、臓器への鉄の過剰蓄積により傷害が発生し悪化していくメカニズムを明らかにすることが必須である。「生体に悪影響を及ぼす鉄過剰状態を引き起こす食餌性鉄含量はどの程度か」を明らかにし、鉄所要量の上限基準を提示する目的で研究を開始した。まずは、「鉄過剰摂取が生化学データに影響を及ぼすか」を明らかにする実験を実施した。雄性SDラットに対し、鉄含量が標準量および過剰量となる飼料をそれぞれ与えて飼育し、定期的な血液サンプリングを実施した。その結果、鉄過剰食摂取群で有意な血中フェリチン量増加が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<貧血のない鉄欠乏の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の下限基準の提示> 短期間の鉄欠乏食摂取により、肝臓の遺伝子発現が変動することが明らかになった。同じ期間で、食餌中の鉄量を段階的に設定し、肝臓の遺伝子発現の応答を解析する予定であったが、現在までに未達成である。その理由として、鉄欠乏食摂取3日目の血中成分の変動の再現性を確認すべく、同条件の動物実験を3回実施することに時間を要したことが挙げられる。貧血モデル動物の作成には、鉄欠乏食摂取3週間程度という知見が十分揃っているものの、貧血のない鉄欠乏モデル作成のための知見はなく、上記スケジュールによる飼育結果の再現性確認は必須であった。いずれも、鉄欠乏食摂取3日目に貧血のない鉄欠乏を呈することが確認され、本実験のスケジュールが貧血のない鉄欠乏ラットモデル作成条件であることが確定した。以後、食餌中の鉄量を段階的に設定し、このスケジュールにて実験を実施することで、生体に影響を及ぼす鉄不足量の下限値を明らかにすることが可能であると考える。 <鉄過剰摂取の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の上限基準の提示の研究> 「鉄過剰摂取が生化学データに影響を及ぼすか」を明らかにするという計画時の目標を達成した。すなわち、鉄過剰食摂取により、ラットの血中フェリチン量が有意に増加することを見出した。結論として、鉄過剰摂取はラットの生化学データに影響を及ぼす。
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Strategy for Future Research Activity |
<貧血のない鉄欠乏の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の下限基準の提示> 「生体に悪影響を及ぼす鉄欠乏状態を引き起こす食餌性鉄含量はどの程度か」を明らかにし、鉄所要量の下限基準を提示する。ラットに対し、鉄含量を段階的に減らした飼料をそれぞれ与え、肝臓および血液を採取する。採取した肝臓よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ(GeneChip Rat Genome 230 2.0 Array, Affymetrix)に供し、トランスクリプトーム解析を実施する。また、血液および肝臓中の生化学データも取得し、DNAマイクロアレイデータと合わせ、総合的に評価する。 <鉄過剰摂取の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の上限基準の提示の研究> 「鉄過剰の量的な影響の解析」を実施する。ラットに対し、鉄含量を段階的に増やした飼料をそれぞれ与え、肝臓および血液を採取する。採取した肝臓よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイに供し、トランスクリプトーム解析を実施する。また、血液および肝臓中の生化学データも取得し、DNAマイクロアレイデータと合わせ、総合的に評価する。 <鉄過剰を反映するマーカー遺伝子の探索> 現在、臓器貯蔵鉄量は、血中フェリチン濃度が正の相関を持つ因子として診断の対象となっているが、貯蔵鉄量の変化が血中フェリチン濃度に反映されるまでにはタイムラグが存在する。一方、鉄過剰は臓器に酸化ダメージを与え、臓器傷害の一因となることから、早期に発見することが肝要である。鉄過剰を早期診断するために、血中フェリチン濃度よりも早期に変動する因子の発見が望まれるが、それには血球細胞の遺伝子発現変動からの予測が有効だと期待される。本研究では、鉄過剰摂取時のラット血球細胞を対象にDNAマイクロアレイ実験を実施し、鉄過剰の血球マーカー遺伝子の探索を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<貧血のない鉄欠乏の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の下限基準の提示> 統計的に解析を実施するため、動物実験における群ごとの匹数は7以上とする。匹数および飼育期間に合わせ飼料(鉄含量を4段階に減らす)を購入する。肝臓を対象とするDNAマイクロアレイはGeneChip Rat Genome 230 2.0 Array(Affymetrix)を1個体につき1枚使用する。また、血中成分、肝臓中成分測定のためのキット、肝臓中成分やRNAの抽出試薬を購入する。血中成分測定のためにマイクロプレートリーダーを購入する。 <鉄過剰摂取の生体応答のメカニズム解明および鉄所要量の上限基準の提示の研究> 統計的に解析を実施するため、動物実験における群ごとの匹数は7以上とする。匹数および飼育期間に合わせ飼料(鉄含量を4段階に増やす)を購入する。肝臓を対象とするDNAマイクロアレイはGeneChip Rat Genome 230 2.0 Array(Affymetrix)を1個体につき1枚使用する。また、血中成分、肝臓中成分測定のためのキット、肝臓中成分やRNAの抽出試薬も購入する。 <鉄過剰を反映するマーカー遺伝子の探索> 統計的に解析を実施するため、動物実験における群ごとの匹数は7以上とする。匹数および飼育期間に合わせ飼料(鉄含量標準食、過剰食)を購入する。血液を対象とするDNAマイクロアレイはGeneChip Rat Genome 230 2.0 Array(Affymetrix)を1個体につき1枚使用する。また、血中成分、肝臓中成分測定のためのキット、肝臓中成分やRNAの抽出試薬も購入する。
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