2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 政穂 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (20582381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トガサワラ / 外生菌根菌 |
Research Abstract |
樹木の養分吸収の大部分は根に共生する外生菌根菌によってまかなわれている。このため、樹木の保全には、樹木だけでなく土壌中の菌根菌を含めた対策が必要なことは明白である。本研究では、樹木の保全と保護に菌根菌を活用した新たな手法を開発することを念頭に、固有種であり絶滅が危惧されているトガサワラを一つのモデルケースとして基礎的な研究を行った。特に、残存するトガサワラ林分に現在どのような菌根菌が生息しているのか、実生にどのような菌根菌が感染し、どの程度成長を促進するのかについて明らかにすることを目的とし、「トガサワラ残存林分内に生息する菌根菌群種の特徴」と「トガサワラ実生に共生する菌根菌とその機能」の2つの実験を行った。 2つの実験ともに調査は紀伊半島2箇所と高知県2箇所の計4林分で行った。各林分のトガサワラ成木の周囲において土壌サンプル(5cm×5cm×10cm)を25 ヶ所ずつ採取した。 「トガサワラ残存林分内に生息する菌根菌群種の特徴」では、採取した土壌サンプルから樹木の根を取り出し、実体顕微鏡下で観察して菌根の形態類別を行った。各サンプルで見られたそれぞれの菌根形態タイプについて。rDNAのITS領域の塩基配列を用いて菌種の同定を行った。その結果、、Cenococcum geophilum やRussula、Lactariusなどが高頻度で検出されたことを示した。また、トガサワラ林分全体で344種の菌根菌が存在し、トガサワラだけでも218種以上の菌根菌が共生していると推定した。 「トガサワラ実生に共生する菌根菌とその機能」では、サンプリングした土壌から根などの粗大有機物を取り除き,約1ヶ月間常温で風乾し,バイオアッセイに供した。バイオアッセイは,チューブに土壌を入れ,アカマツまたはダグラスモミの種子を植えて現在育苗中である(6ヵ月間、育苗予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の実験で、追加調査の必要があるものの、昨年行った調査実験の結果は、すでに解析が終了し、6月に日本菌学会第57回大会にて発表を行う予定である。また論文はすでに作成し、現在投稿投稿中であるため、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.播種から6ヶ月後にバイオアッセイ実生を採取する。実生の樹高、乾重を測定する。2.実生の菌根の観察とDNA解析:前年度に現地土壌から採取した菌根と同様の手法によって実生の菌根の菌種を同定する。3.データ解析:トガサワラ実生に感染した菌根菌の種構成と成木から得られた種構成を比較し、休眠胞子に依存した菌種を特定する(そうした菌種には特異的な菌種が多い)。アカマツ対照区との結果の違いから、バイオアッセイに用いる樹種の影響を評価する。また、滅菌した対照区とバイオアッセイ区の成長差、感染した菌根菌の種を総合的に解析し、実生の成長におよぼす各種菌根菌の影響を明らかにする。結果は論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用する研究費は菌根菌の種の同定のためのDNA解析用の消耗品費を中心とした物品費として1,050,000円、調査地や学会発表のための旅費として150,000円、その他論文投稿時の英文校閲などの費用として50,000円を予定している。
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