2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24780143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 政穂 東京大学, 新領域創成科学研究科, 研究員 (20582381)
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Keywords | 外生菌根菌 / トガサワラ / 絶滅危惧種 |
Research Abstract |
樹木の保全には、樹木だけでなく土壌中の菌根菌を含めた対策が必要である。本研究では、樹木の保全と保護に菌根菌を活用した新たな手法を開発することを念頭に、絶滅が危惧されているトガサワラを一つのモデルケースとして基礎的な研究を行った。トガサワラ林分に現在どのような菌根菌が生息しているのか、実生にどのような菌根菌が感染し、どの程度成長を促進するのかについて明らかにすることを目的とし、I「トガサワラ残存林分内に生息する菌根菌群種の特徴」とII「トガサワラ実生に共生する菌根菌とその機能」の実験を行った。 両実験ともに調査は紀伊半島2箇所と高知県2箇所の計4林分で行い、各林分のトガサワラ成木の周囲において土壌サンプルを25ヶ所ずつ採取した。 Iの実験では採取した土壌サンプルから樹木の根を取り出し、実体顕微鏡下で観察して菌根の形態類別を行った。各サンプルで見られたそれぞれの菌根形態タイプについて、DNAの塩基配列を用いて菌種の同定を行った。その結果Cenococcum geophilum(以下Cg) やベニタケ属、チチタケ属などが高頻度で検出された。またトガサワラ林分全体で344種の菌根菌が共生していると推定した。 IIの実験ではサンプリングした土壌でバイオアッセイをアカマツとダグラスモミで行い、Iと同じ手法で菌根菌種の同定をした。両種ともに最も優占していた菌種はCgであった。アカマツで2番目に優占していたのはアカショウロであり、ヌメリイグチ属菌も高頻度に出現した。一方、ダグラスモミでは、Rhizopogon sp.1(以下R1)が2番目に優占していた。R1はトガサワラ属に特異的な系統群に属しており、アカマツでは全く出現しなかった。Iでは、IIで優占していたショウロ属やヌメリイグチ属は全く検出されていないことから、これらの種はおもに埋土胞子バンクに依存した繁殖戦略をとっているものと考えられた.
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