2013 Fiscal Year Research-status Report
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24780149
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中島 千晴 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (20378318)
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Keywords | 樹病 / 苗圃 / 植物病原菌 / 海岸林 / 分類学 |
Research Abstract |
多発する大規模自然災害からの復旧において造林樹および緑化樹の育成が急がれている。一方で苗圃で育成中に発生する葉枯性の病害は被害が大きく対策が必須である。しかしながら、多くの植物病原菌類の分類学的位置づけに関する研究は、戦後復興期のやはり育成が急務であった時代に行われたままである。すなわち、これら病害防除の上での基本情報である学名やその分離株は近年の分類学的基準に則っておらず、これまでの成果を活かすことも、また発信することもできず、国内外の要請に応えることが出来ていない状況にある。そこで東北地方の岩手県を中心に現地での病害発生状況調査を行い、東北地方を原産地とする植物病害の採集を行った。また、東北地方を中心に採集された植物病害標本を検討し、最新の分類学的基準と比較、新たに得た標本及び菌株をそのEpitype標本と指定した。これらの成果については、国内外の共同研究者と共に国際誌に発表、特に、木本および草本植物の葉枯性重要病害の病原菌であるPseudocercospora属菌、Cercospora属菌、Phyllosticta属菌、Alternaria属菌に関する分類学的研究を実施し、アジア圏の植物寄生菌類の分類学研究のフォーカルポイントとして広くアピールすることが出来た。また、特に広く植栽され復旧のシンボル的存在と見なされることの多いサクラ類の葉枯性病害など、国内の病害診断・防除の現場への普及が必要な成果についてはあえて和文で報告し、その成果の普及を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際共同研究により、木本および草本植物の葉枯性重要病害病原菌であるPseudocercospora属菌、Cercospora属菌、Phyllosticta属菌、Alternaria属菌に関する分類学的研究を国際誌6本に発表、掲載された。これらの雑誌はいずれもPubMed収録雑誌で、Mycoscience誌 に3本 (IF値 6.12, InCites Rank Q1 1/23)、Fungal Diversity誌に1本([IF = 5.3)、Journal of Phytopathology誌に1本 (IF=1.0)など、いずれも評価が高い雑誌に蘭・英・南ア・墨・タイ・韓国・日本の国際共同研究(論文によりメンバーは異なる)として発表した。また、生育期間全般に広く発生するサクラ類の葉枯性病害についてその病原菌の分類学上の整理を行うと共にその病原性や生活環を検討し、国内への成果普及を目的に和文原著論文として発表し想定した論文数よりも多くの成果を公表できた。一方で、現地の病害発生状況調査は現地へのアクセス方法が限定されており、更に複数回実施する必要が生じていること、また雪害など新たな自然災害に対応した体制を整える必要があることから、おおむね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
予備調査により病原菌の種分類に疑問があること、苗畑において広範囲に発生が見られることなどから、マツのLophodermium菌による葉ふるい病、Pseudocercospora属菌による葉枯病、本年度雪害の著しかった地域におけるCytospora属菌(Valsa属菌)による茎枯・芽枯性病害の分類学的研究を行う。またこれらの成果を国際菌学会議(IMC10, タイ)で発表し、近隣諸国との共同研究へと発展させ、必要に応じて共同研究を実施する。また、雪害など新たな自然災害に対応した体制を整え、場合によっては新たなプロジェクトの設置を検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料の処理が困難で分子検討解析数が目標に達しなかったこと、新たに対応する必要のある風水害、雪害など重大な天災が生じ、新たな調査日程を次年度以降再検討する必要があった。また論文による成果の公表を優先し、調査、実験が次年度と予定が変更となったため。 消耗品および調査旅費にて繰り越し分を利用する予定
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