2014 Fiscal Year Research-status Report
都市近郊林の林分属性の変化が被食種子散布における生物間相互作用に与える影響
Project/Area Number |
24780154
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
平山 貴美子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (10514177)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 被食種子散布 / 遷移進行 / 暖温帯林 / 都市近郊林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市近郊林の今後の林相変化や種多様性の維持に関わる被食種子散布における生物間相互作用に焦点を当て、森林面積の減少、断片化、遷移による種構成の変化といった林分属性の変化に対し、どのようにその相互作用が変化するのか定量的に明らかにすることを目的としている。平成26年度の研究成果は以下の通りである。
1.京都市近郊林において遷移段階の異なる3つの林分(落葉広葉樹二次林;「落葉林」、近年コジイ優占林になった林分;「コジイ林」、古くからのコジイを中心とする常緑広葉樹林;「常緑林」)に調査地を設け、遷移による林分属性の違いが鳥による種子散布パターンにどのような影響を与えているのか解明することを目的に、林分への飛来鳥類の観察とシードトラップの回収を定期的に行い、これまでの約4年間にわたるデータを解析した。その結果、果実食鳥類の観察頭数は、林分における季節毎の果実生産量とは関係なく、林分の違いに有意に影響を受け、遷移が進行し林分が発達するほど飛来鳥類数が増加することが明らかとなった。さらに、散布種子の種数も遷移による林分の発達に伴い多くなっており、種の多様性の維持にも影響している可能性が指摘された。
2.京都市近郊林において優占的な鳥散布樹木であるカナメモチについて遷移段階の異なる2つの林分(「落葉林」、「コジイ林」)に調査地を設け、カナメモチの個体群構造及び繁殖、果実の被食パターン、実生の更新を調べた。果実生産量は隔年での強い豊凶があり、豊作年は「コジイ林」の方が被食率が高い傾向が見られた。一方で、個体群構造や実生の動態の追跡の結果、両林分とも繁殖個体の周辺で、実生が更新し実生バンクが形成されていることが明らかとなった。このような更新パターンには、結実時期が2月頃という遅さと強い豊凶というカナメモチの繁殖特性が影響している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の交付申請書に記載した研究目的は、主に森林面積の減少、断片化、遷移による種構成の変化といった林分属性の変化に対し、果実の生産量の変動がどのようになるか、またそれに対する鳥類の飛来頻度や、鳥類による種子散布パターンがどのように変化するか、年次変動を含めて解明を行うといったものであった。これについては、過去4年にわたるデータの解析を行い、鳥類の飛来が、果実生産量よりも遷移に伴う林分の発達に伴って増加し、それが散布種子の多様性にも影響しているということを定量的に明らかにすることができた。この成果は学会で発表し、投稿論文をとりまとめている最中である。 また対象樹種を絞り、それらの林分による鳥による種子散布パターンの違いやそれがどのように更新に影響しているのかということも年次変動を含め、カナメモチをはじめ複数の樹木で追跡している。この成果についても一部、学会で発表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、都市近郊林の林相変化に伴う鳥類の被食種子散布パターンの違いを明らかにするため、特に集中的に観察を行うため各林分に設定した鳥散布樹木について、鳥類の飛来頻度、果実採食量、散布種子の構成、採食後の種子の運搬量などを調べ、対象樹木の果実量や周辺樹木の果実量との関係性、他の鳥散布樹木の散布との関係性を解析する。さらにそうした対象樹木から落下した果実や鳥によって散布された種子の運命についても継続調査を行い、被食種子散布が森林動態にどのように関わるのか解明を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度は投稿論文執筆のため、資料整理のための人件費、専門的知識の提供を受けるための出張、さらに校閲経費が多くかかってくることが予想された。このための予算を確保した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料整理のための人件費、校閲経費などに使用する。
|
Research Products
(2 results)