2015 Fiscal Year Annual Research Report
アカマツのマツ材線虫病抵抗性とその他形質の遺伝的相関関係
Project/Area Number |
24780158
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山野邉 太郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, 育種センター, 室長 (60370855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アカマツ / マツ材線虫病 / 抵抗性育種 / さし木発根性 / 成長 / 材質 / 遺伝的相関関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアカマツの”マツ材線虫病抵抗性”と”その他形質”との遺伝的な相関関係を解明することを目的としている。 本年度は、これまでに発表済みであるさし木発根性以外の形質について、これまでに蓄積したデータを解析・発表した。解析対象は、申請時点で計画していた初期成長、通直性、ヤング率(応力波伝播速度)に、20年次樹高、20年次胸高直径、容積密度(ピロディン陥入量)を加えた計6形質とした。データは人工交配試験地1か所から得て、交配が計画通りに成立して試験地設定台帳通り植栽されているか否かをDNA分析(SSR3遺伝子座)を用いてチェックした上で行った。 設定台帳上は23親24組み合わせ277本分であったデータは、DNA分析を行い親が不明な個体を除去し整理した結果、25親24組み合わせ255本の解析対象として整理された。初期成長を間接的に示す胸高部位の節間長は、狭義の遺伝率が0.16(親子鑑定後)と低く材線虫病抵抗性との遺伝的相関関係を検討する対象から除外した。その他6形質については、狭義の遺伝率が0.33~0.55で、他樹種の諸形質に認められる遺伝性と比較して中程度もしくはやや高い遺伝率を示した。本題であるマツ材線虫病との遺伝的相関については、いずれも有意差は検出されなかった。 以上の結果から考察すると、現状のアカマツ育種素材のマツ材線虫病抵抗性について選抜を行って集団の抵抗性が強くなる方向に遺伝的組成を絞り込んでも、直ちにその他形質の平均値に影響がおよぶことはない。ただし、この結果は集積効果のある抵抗性遺伝子が次世代化により固定化されていった際の傾向ではない。アカマツのマツ材線虫病抵抗性については、集団選抜育種の進捗に合わせて森林経営上重要な形質の期待値がどのように変化していくか、逐次チェックしていく必要があると考えられる。
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