2013 Fiscal Year Research-status Report
クロマツの材線虫病抵抗性発現に環境要因が及ぼす影響
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24780161
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 九州育種場, 主任研究員 (40415039)
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Keywords | クロマツ / マツ材線虫病 / 抵抗性 / 環境要因 |
Research Abstract |
本研究は苗畑,温室および人工気象装置内におけるマツノザイセンチュウ(以下線虫)接種実験により,抵抗性クロマツにおける抵抗性発現に影響する環境要因を明らかにすることを目的としている。 今年度は昨年度の結果を受けて,光環境が及ぼす影響を検討するため2つの実験を行った。一つ目の実験は被陰の程度が異なる寒冷紗を用いて,光環境を6段階に変えた条件下(65,50,40,30,15,0%被陰)で抵抗性と精英樹のクロマツ各2家系に線虫の人工接種を行った。その結果,65,50%被陰区は0%被陰区に比べて有意に枯損しやすかった。また,抵抗性の2家系はどちらも精鋭樹家系より枯損しにくかった。二つ目の実験は自然受粉した抵抗性のクロマツ1家系に対して,個体の全体を被陰する処理区(全被陰区),個体の半分を被陰する処理区(半被陰区),および被陰しない処理区(無被陰区)を設け,線虫の人工接種を行った。この時,半被陰区の苗について,被陰されている枝に接種する個体(半被陰区陰接種)と被陰されていない枝に接種する個体(半被陰区陽接種)に分けた。実験全体の枯死率は非常に低かったため,発病率について解析を行った。その結果無被陰区と全被陰区ではそれぞれ23%と53%の苗が発病した。一方,半被陰区陽接種と半被陰区陰接種はそれぞれ30%と53%の苗が発病した。 野外の海岸クロマツ林として福岡県福岡市にある生の松原において,その光環境を把握するため,3Dスキャンによる測量を行った。 また,抵抗性の発現に気温が及ぼす影響を検討するため,自然受粉した抵抗性と精英樹のクロマツ各2家系を人工気象装置内で養成し,線虫を接種した。気象室内の光条件は14L10Dとした。気温は高温区で昼間と夜間それぞれ35℃と30℃,普通区では30℃と25℃とした。精鋭樹家系は抵抗性より枯れやすく,また,高温区は普通区より苗が有意に枯れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は,平成25年度は温度環境および水分環境について実験を行う予定にしていた。しかしながら,平成24年度の実施結果から光環境についてより詳細な実験を行う必要があると考え,平成25年度は水分環境に関する実験を保留して,光環境に関する二つの追加実験を行った。本研究はクロマツの抵抗性の発現にかかわる環境条件を明らかにすることを目的としており,水分環境については計画より遅れがあるものの,光環境が及ぼす影響については当初計画していたより詳細な検討を実施している。このような状況から全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は光環境が抵抗性に及ぼす影響について,付加的な実験を一つ行う。平成24年と25年の実験では接種の2週間前に被陰処理を行っていたため,それまで好適な光環境にいた個体が,急に被陰された場合の抵抗性の発現を評価している。しかしながら野外環境でははじめから被陰条件下に存在する個体もあり,そのような個体は陰葉をもつために光に対する反応が異なると考えられる。そこで今年度は5月から被陰した個体と接種2週間前に被陰した個体を用いた接種実験を行う。また,温度および水分環境が及ぼす影響について検討するため,それぞれの条件を変えた処理区を設けて接種実験を行う。当初の計画では平成26年度に湿度が及ぼす影響を検討することとしていたが,この部分については,扱わず,光環境が及ぼす影響の検討に注力する。これらの実験結果と前年までの結果をとりまとめる。
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