2012 Fiscal Year Research-status Report
木質系芳香族バイオマスから微生物発酵で生産される選択的セシウムキレート剤の研究
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24780172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
大塚 祐一郎 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (80455261)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / キレート / リグニン / バイオマス / 代謝工学 / 錯体 / バクテリア / グリーンケミカルス |
Research Abstract |
PDCは木質系芳香族バイオマスから組換え微生物発酵により生産されるプラットフォームケミカルスであるが、I族のアルカリ金属キレーターというユニークな特徴も持ち合わせている。また、同じI族のアルカリ金属の中でも特にCsと優先的に相互作用し錯体沈殿を生じることから、現在深刻な問題となっている放射性セシウムの沈殿除去に使用できると考えられた。そこでPDCによるPDC-Cs錯体系性能を検討するために、まずは実験に使用するPDCを組換え微生物発酵により作成した。PDC高生産組換えバクテリアPseudomonas putida PpY1100/pDVZ21をジャーファーメンターで高密度培養し、そこにバニリン酸を滴下することによりPDCを発酵生産した。得られた発酵液から連続溶媒抽出および再結晶による精製を経て高純度PDCを約100g得ることができた。得られたPDCを用いてPDC-Cs錯体結晶を作成し、X線結晶回折により構造を特定した。その結果、PDC-Cs錯体は2つのCs原子を12のPDC分子が取り囲むように相互作用し、巨大かつ複雑な錯体を形成していることが明らかとなった。 福島第1原発事故による放射性セシウム汚染は現在深刻な問題となっている。特に毎日膨大な量発生する炉心の冷却水から放射性セシウムを除去する技術開発は急務である。本研究はゼオライト等による非特異的吸着やフェロシアン化鉄などのような環境負荷のかかる吸着剤とは異なり、Cs特異的グリーンケミカルスによる錯体沈殿除去という全く新しいCs除去法を提案できる可能性があり社会的に大きく貢献できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDC高生産組換えバクテリアを用いたジャーファーメンターによる発酵により2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(PDC)をファインケミカルスとして100g生産することができ、当年度の目標を達成した。また、得られたPDCを用いてPDC-Cs錯体結晶を作成し、X線結晶回折により錯体構造を決定したことにより、PDC-Cs錯体は分子量2000以上の高分子となっていることが分かった。このことから分子量分画により放射性セシウムを除去できる技術開発の可能性が示され、次年度以降の技術開発の方針を決めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PDC-Cs錯体が分子量2000以上の高分子構造をとっていることが分かったため、次年度以降はこの高分子錯体を水溶液中で捕捉し除去する技術開発を行う。具体的には分子量分画による除去が可能であるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の実験に使用するPDCを作成するための各種試薬類。組換え微生物を維持するための遺伝子工学試薬。培養するための培養試薬。発酵生産するための試薬。発酵液からPDCを抽出するための各種有機溶媒及び酸。抽出したPDCを精製するためのクロマトグラフィー用担体。分析するための各種カラム。セシウム塩。PDC-Cs錯体を分子量分画するための限外濾過膜及びゲル濾過担体。またCs除去率を調べるためのICP-MS分析用試薬。実験に使用する純水を製造するためのカラムおよびフィルターなどが必要である。
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Research Products
(1 results)