2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒラメ変態過程における左右非対称化の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
24780178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横井 勇人 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40569729)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒラメ / 変態 / サブトラクション |
Research Abstract |
ヒラメ・カレイ類は左右対称な仔魚として成長し、変態期に左右非対称な成体へと劇的に体制を変化させる。変態は甲状腺ホルモンによって誘導されることが明らかになっているが、左右非対称性を生み出す分子メカニズムは不明な点が多い。本研究では、ヒラメの変態プロセスについて、1)甲状腺ホルモンによる誘導とその後の左右非対称な形態形成の分子制御メカニズムを明らかにすること、および2)変態異常発生の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 申請時は、有眼側と無眼側で発現の異なる遺伝子を検出するためにサブトラクション法を利用することを計画していたが、より高感度で網羅的解析が可能である次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を、理化学研究所横浜オミックスセンターの東北復興支援プロジェクトにより実施していただけることになり、in silicoでバーチャルなサブトラクションを実施することとした。 これまでに、次の2種類のサンプルについて、次世代シーケンサーによるRNA-Seq解析を完了している。実験1)変態後期:色素細胞の分布に顕著な左右差が生じているステージで、有眼側と無眼側の皮膚でサブトラクション。実験2)変態初期:眼球移動前の左右差がはっきりする前のステージで、眼球周辺組織の左右でサブトラクション。実験1では、形態的にもはっきりとした左右差が認められることから、多くの遺伝子が明瞭な発現強度の差を示すことが予測されたが、実際の実験結果からもそれが裏付けられた。実験2では、特に眼上棒状軟骨周辺の微細な組織を解剖してサンプルとした。左右非対称な体制に移行する際の微細な左右差が検出されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたサブトラクション法はまとまった量のRNAを必要とするため、RNAの収量が見込めない上述実験2の様な微細組織にはそのままでは適用不可能であり、サンプルのRNAを増幅する必要があった。しかし、増幅することによってサンプル内のRNA量に偏りが生じてしまうため懸念材料の一つであった。次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析により、in silicoサブトラクションを行うことができたため、増幅による影響を心配することなく、高クオリティーな発現比較を行うことができた。 また通常のサブトラクション法では、偽陽性が多く含まれてしまうことも問題となっており、サブトラクションで単離された候補遺伝子は、引き続き注意深くスクリーニングする必要があったが、次世代シーケンサーによる発現プロファイルの比較では、実験のレプリケイト間で検定を行うことにより偽陽性を減らせることも利点である。 イルミナ社のHiSeq 2000を用いたトランスクリプトーム解析により、100 bpのペアエンドで、実験1について約4億2千万リード、42 Gbp、実験2について約2億8千万リード、28 Gbp、総計70 Gbpの塩基配列情報を得ることができた。CLC Genomics Workbenchを用いてde novoアッセンブルを行い、実験1、実験2ともに、約14万のコンティグに集約された。これらに対してマッピングを行い、発現強度の差異を比較することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を実施できたことにより、研究のステージは当初の計画よりも進んでいる。単離された遺伝子は、in situ hybridization法により発現パターンを解析し、有眼側と無眼側で実際に発現強度に違いがあるのか検証を行う。左右非対称に発現する遺伝子でも、発生ステージによって左右差は様々であり、分かりにくいケースでは変態期のある短い期間のみ左右非対称に発現するが、その前後では左右対称である例が最近分かってきた。これらをふまえると、in situ hybridizationによるスクリーニングは、発生ステージ・体の部位・切片方向などを考慮しながら慎重に実施する必要がある。実験1で単離された遺伝子は、in situ hybridizationによる組織発現レベルでも明瞭な左右差を示すことが予測されるが、実験2の様な左右差が微妙な例では特に注意が必要であると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に当初計画よりも進展があったため、300,000円の前倒し支払いを受けた。これはサブトラクション後のin situ hybridization法などによるスクリーニングを目的としたものであり、DIGプローブ合成試薬や遺伝子クローニングなどの分子生物学に使用する物品の購入に使用した。2年目も引き続きスクリーニングを進める計画であり、in situ hybridizationや遺伝子クローニングを実施するので、2年目に繰り越した84,681円を合わせて、これらの実験に必要なDIGプローブ合成試薬などのin situ hybridization関連試薬や遺伝子クローニングなどの分子生物学に使用する物品を購入し、当初の計画通りにin situ hybridizationにより遺伝子発現を組織レベルで解析する予定である。また研究成果の発表のために、島根で行われる日本発生生物学会および神戸で行われる日本分子生物学会年会に参加する予定である。
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Research Products
(18 results)