2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒラメ変態過程における左右非対称化の分子メカニズムの解明
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24780178
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横井 勇人 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40569729)
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Keywords | ヒラメ / 異体類 / 変態 / サブトラクション |
Research Abstract |
ヒラメ・カレイ類は左右対称な仔魚として成長し、変態期に左右非対称な成体の体制へと移行する。変態は甲状腺ホルモンによって誘導されることが明らかになっているが、左右非対称性を生み出す分子メカニズムは不明な点が多い。また人工飼育下では変態異常に起因すると考えられる有眼側の白化や無眼側の黒化が発生して問題となっている。本研究は、1)甲状腺ホルモンによる変態の誘導とその後の左右非対称な形態形成の分子制御メカニズムを明らかにすること、および2)変態異常発生の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 当初はサブトラクション法により左右非対称な遺伝子の単離を計画していたが、理化学研究所横浜オミックスセンターの東北復興支援プロジェクトのサポートにより、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行い、in silicoサブトラクションにより発現に左右差のある遺伝子を網羅的に単離することができた。 これまでに2種類のサンプルについてRNA-Seq解析を完了しているが、平成25年度は左右の差が顕著な変態後期の皮膚および筋肉サンプルについて重点的に解析を進めた。マッピングし左右差を数値化したデータから、RT-PCRにより候補遺伝子をクローニングし、切片in situ hybridization法により発現の左右差を組織レベルで検証している。これまでに約20の遺伝子についてin situ による検証を完了しているが、多数のsolute carrier familyメンバーやpurine nucleoside phosphorylaseなど、色素細胞分化への関与が知られている因子が多く含まれていた。これは、変態後期の左右非対称な現象として、有眼側で活発に色素細胞分化がおこっていることとコンシステントであるが、神経堤細胞から色素細胞分化にいたる過程に関与する遺伝子が網羅的に単離できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
変態期のヒラメ有眼側と無眼側で発現に差がある遺伝子を検出するステップで、当初計画していたサブトラクション法に代えて、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を実施することができたため、ゲノムワイドで、より信頼度の高い発現比較を行うことができた。ヒラメでは参照ゲノムが利用できないこともあり大規模データの取り扱いには専用のソフトウェアや特殊なコンピュータ解析が必要であったが、横浜理研および国立遺伝学研究所、基礎生物学研究所などのバイオインフォマティクスに関するトレーニングコースに参加してコンピュータの扱いに関する基礎的な知識を得ることができた。理研による東北支援プロジェクトで提供いただいたCLC Genomics Workbenchをしようして、de novo assembleとRNA seq データのマッピングおよびレプリケート間の検定を行うことにより、左右で差がある遺伝子の抽出に成功した。HiSeq 2000による100 bpのペアエンドで、実験1について約4億2千万リード、42 Gbp、実験2について約2億8千万リード、28 Gbp、総計70 Gbpの塩基配列情報を得たが、アッセンブルには全リード、またはリードの一部を用い、ワードサイズなどのパラメータについて複数のパターンでアッセンブルを行った。作成したコンティグを並行して使用し、それぞれのマッピングデータを比較して結果を検証することにより、参照ゲノムの代用としての不完全さを補うようにつとめた。発現強度の閾値を10 RPKM 、補正後のp値の閾値を0.01として候補遺伝子を抽出した。これまでに約20の候補遺伝子についてRT-PCRによりクローニングして、切片in situ hybridization法により発現の左右差を組織レベルで検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を実施できたことにより、当初の計画より網羅的な解析を行うことができている。単離された遺伝子は、in situ hybridization法により発現パターンを解析し、有眼側と無眼側で実際に発現強度に違いがあるのか検証を進めている。2年目は、2種類実施したサンプルのうち、左右の差がより顕著である変態後期のサンプルを中心に解析を行った。ここでは、有眼側のみで活発な色素細胞分化を反映して、神経堤細胞から色素細胞への分化に関係のある遺伝子が多く単離された。これまでに約20の遺伝子について、クローニングと切片in situ hybridizationによる組織レベルの解析を完了している。3年目は引き続き変態後期の有眼側で強く発現している遺伝子の解析を進めるとともに、同時期に無眼側で強く発現している遺伝子についてもクローニングと解析を行う予定である。 また、変態期の眼球移動というよりダイナミックな現象に迫ることが期待される、変態初期の眼上棒状軟骨のサンプルについても、解析に着手したいと考えている。RNA seqデータの比較では、変態後期のサンプルよりも左右の差が小さい傾向が見られている。微細な組織であり、また検証に使用する切片in situ hybridization用のサンプル準備も注意が必要であるが、動的な形態形成運動の理解につながることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通りに予算を執行したが、購入を予定していた試薬が在庫がなかったため、次年度に購入することとした。 予定していた試薬を購入する。
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Research Products
(20 results)