2012 Fiscal Year Research-status Report
気候変動と陸域影響をふまえた二枚貝養殖適地選定モデルの開発
Project/Area Number |
24780185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 志保 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60432340)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 物理・生態系モデル / 二枚貝養殖 / 気候変動 / 陸域影響 |
Research Abstract |
本研究では,これから進行していく気候変動と陸域環境の変化に対応した沿岸漁業を提案するために,パイロットスタディーに適したスケールを持つ七尾湾において実用的な二枚貝養殖適地選定モデルを作成する. 平成24年度には,湾全体の物理場及び生物化学環境の観測を毎月1回,また二枚貝生息環境として重要な海底付近の物理場及び生物化学環境の観測を夏季から秋季にかけて毎月2回実施した.さらに陸域からの栄養塩供給を見積もるための広域観測および陸域河川の生物化学環境の観測を実施した.得られたサンプルを分析し,データを解析した結果に基づいて,湾内の流動・物理環境を再現する物理・生態系モデルを作成している.また,物理環境(水温)および化学環境(溶存酸素量)が養殖対象貝類に及ぼす影響をパラメータ化するために,石川県水産試験場と共同で水槽実験を行なった. 上記の成果を用いて,浅海部(二枚貝養殖地)の物理環境に対する,日本海全体の水温上昇の影響をシミュレートすることができる.また,植物プランクトン量(二枚貝の飼料環境)に対する,栄養塩供給量の増減をはじめとする陸域側の変化の影響をシミュレートすることができる. 以上の結果は,本研究で目的としている,温暖化と陸域環境の変化をふまえた二枚貝養殖適地選定モデルの土台となるものである.二枚貝養殖は安定した漁業経営を支える点において,地域の漁業を守るためにも重要である.このモデルの作成手法は他の海域にも応用できることから,日本各地で,また世界各地でこれから進行していく気候変動や陸域環境の激変に対応した持続的な沿岸漁業を行なっていくための対策につなげることのできる発展性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では,平成24年度に物理場及び生物化学環境の観測を行ない,これに基づいてモデルを作成することを目標としているが,概要に示した通り,平成24年度の研究実績はこれに沿うものであるため.また,計画では物理環境(水温)が養殖対象貝類に及ぼす影響をパラメータ化するための水槽実験を平成25年度に行なうとしていたが,平成24年度にこの一部分を行なっているため.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き,湾内の環境を再現する物理・生態系モデルを作成し,温暖化影響・陸域影響の解析を行なう. また,物理場及び生態系モデルのアウトプットを反映することが可能な二枚貝生育シミュレーションモデルを作成するために,石川県水産試験場と共同で水槽実験を行ない,物理環境(水温)および飼料環境(植物プランクトン量)が養殖対象貝類に及ぼす影響をパラメータ化する. さらに平成24年度の結果と水槽実験の結果を合わせて温暖化と陸域環境の変化をふまえた湾内における二枚貝の生育シミュレーションを行ない,養殖適地を提案する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額24万円は,25年度の研究費と合わせて,石川県水産試験場における水槽実験にかかる費用および京都-石川間の旅費に使用する.また,学会発表旅費および論文の印刷費に使用する.
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