2012 Fiscal Year Research-status Report
多核単細胞性緑藻を用いた有用物質生産のための遺伝子組換え技術の開発
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24780186
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平山 真 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (40535465)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子組換え / 海藻 / 細胞再構築現象 / ハネモ |
Research Abstract |
多核単細胞性緑藻であるハネモにおいては、細胞損傷により流出したオルガネラが自然に凝集し、プロトプラストが形成される特異な機構が存在する。本研究では、ハネモのこの細胞再生機構に着目し、これを利用した同藻への外来遺伝子導入法について検討した。 まず、データベース上および先行研究で明らかとなったハネモ属遺伝子配列を網羅的に解析することで、使用頻度の高いコドンを推定し、レポーターとして用いる蛍光タンパク質AcGFP遺伝子配列につきコドンを最適化した合成DNAを調製した。次に、ハネモ藻体内で効率的な外来遺伝子発現に寄与すると期待されるハネモ内在性遺伝子EF-1aの転写調節領域の獲得を試みた。すなわち、先行研究により決定されたハネモEF-1a cDNAおよび同ゲノム部分配列を参考にinverse PCR法に供することで、1,072 bpの推定EF-1aプロモーター領域のクローニングに成功した。同プロモーター領域につき、比較的ハネモと近いと考えられる微細藻クラミドモナスのものと配列比較することで機能部位の推定を試みたが、顕著な類似性は認められなかった。 上記ハネモEF-1aプロモーターおよびコドン最適化AcGFP遺伝子配列を用いてハネモ用発現ベクターを構築し、合わせて、高感度かつ定量性に優れるルシフェラーゼ(hRluc)遺伝子をレポーターに用いたベクターの調製も行った。ハネモ雄株を対象に、これら発現ベクターにつき、1)藻体を対象としたパーティクルガン法、2)藻体を細断後、形成されたプロトプラストを対象としたトランスフェクション法、または3)ベクターを添加した人工海水中で藻体を細断しプロトプラストを形成させる手法、によりハネモへの導入を試み、経時的にレポーターの発現の有無を調べた。その結果、いずれの手法においても外来遺伝子の発現は認められなかった。更なる条件検討が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初目標の通り、レポーター遺伝子のコドン最適化、およびハネモ内在性遺伝子由来プロモーター領域のクローニング、さらにこれらを用いた発現ベクターの構築を達成した。しかしながら、外来遺伝子導入時の藻体の処理方法などについての条件検討や、プロモーター領域の欠失変異体の作製には至っておらず、現在までに外来遺伝子を発現するハネモ藻体が獲得できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回クローニングされたプロモーター領域が機能部位を含んでいない可能性が考えられることから、更なる上流域のクローニングを試みる。また、得られたプロモーター領域を用いて新たに構築した発現ベクター、もしくは先行研究で外来遺伝子の発現が認められたルシフェラーゼmRNAを用い、外来遺伝子導入時の藻体処理条件ならびに使用するDNA量などを種々検討し、最も効率的な外来遺伝子発現がみられる条件を見出す。同条件を用いてハネモ雄株を形質転換後、蛍光顕微鏡(本申請課題で購入した)下で蛍光を示す個体または藻体領域を選抜・分取する。十分に成長させた後、Togashi and Cox(2008)の報告を参考に培養時の光/温度条件を変化させることで催熟し、雄性配偶子を得る。形質転換されていない雌株を同様に処理して得た雌性配偶子と直ちに受精させることにより、遺伝子組換え胞子体(ヘテロ)を作出する。次に、当該胞子体をTogashi and Cox(2008)の報告を参考に処理することで、藻体一様に外来遺伝子を発現する遺伝子組換え配偶体(雄株・雌株)を獲得し、ハネモにおける遺伝子組換え技術を確立する。また、並行して、より高発現を示すプロモーター領域の探索を行うとともに、確立された遺伝子組換え技術を近縁種のオオハネモ、および同様に多核単細胞性緑藻であり重要な養殖種であるクビレズタ(ウミブドウ)またはその近縁種センナリズタへ適用することで、他種への応用を検討する。さらに、上記により得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に発現ベクターの調製ならびにハネモへの外来遺伝子導入に用いる試薬類および器具類に用いる。また、クビレズタの栽培を行う沖縄県海洋深層水研究所(久米島)での研究打ち合わせや情報収集、ならびに本研究により得られた結果について成果発表を行うための旅費に用いる。
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Research Products
(1 results)