2012 Fiscal Year Research-status Report
有害赤潮プランクトン・シャトネラの摂餌による赤潮の発生・維持機構の解明
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24780191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (30601918)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シャトネラ / 赤潮 / 混合栄養 / 八代海 |
Research Abstract |
[現場シャトネラ赤潮の摂餌動態] シャトネラの出現動態および摂餌特性を把握するため、5月から3月にかけて八代海で現場調査を行なった。今年度は八代海にはシャトネラは出現しなかったため、摂餌特性の検証を行うことはできなかった。9 月12日に有明海でシャトネラ赤潮が発生したため、海洋調査を行なった。脆弱なシャトネラ細胞を観察するため、HEPES緩衝剤の自然シャトネラ群集への適用を試みた。検証の結果、シャトネラ細胞内に摂食された他のプランクトンを観察することはできなかった。しかし、現場環境において栄養塩濃度が低い湾口部においても5×103 cells ml-1を越える高いシャトネラ細胞密度が観察され、次年度以降の課題として重要であると考えられた。このとき、培養実験に用いるための有明海産Chattonella antiqua株を確立した。 [摂餌によるシャトネラの増殖特性] 摂餌がシャトネラの増殖特性に与える影響を評価するため、八代海産C. antiqua培養株に、シアノバクテリアSynechococcus sp. 株を添加して培養実験を行なった。培養の結果、シアノバクテリア添加区と非添加でC. antiqua培養株の増殖速度に有意な差は見られなかった。八代海の自然海水を3μmフィルターで濾過した海水にC. antiqua培養株を添加する実験を行なった。多くの月で、C. antiqua非添加区よりも添加区のほうがバクテリア細胞密度が低下した。このバクテリア細胞密度の低下が摂食によるものか、他の要因によるものであるのかを検証することが重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は八代海におけるシャトネラの出現動態および摂餌特性を把握することができなかった。これは、今年度八代海にはシャトネラが出現しなかったためである。しかし、有明海で濃密なシャトネラ赤潮が発生したため、急遽有明海で調査を行い、栄養塩濃度が高い湾奥部だけでなく、濃度が低い湾口部においてもシャトネラが高密度になることを捉えることができた。また、シャトネラ細胞は脆弱で固定による詳細な観察は困難であったが、近年開発されたHEPES緩衝剤を有明海の自然シャトネラ群集へ適用することにより、固定することができることを確認した。 摂餌実験によって、通常の培地ではシアノバクテリアの添加はC. antiquaの増殖速度に影響を与えないことが明らかとなった。培地の栄養塩濃度を変化させて培養実験を行う予定であったが、低栄養塩条件で実験に供することができるだけのC. antiqua細胞収量を得ることが困難であった。捕食者を除いた自然海水にC. antiqua培養株を添加すると、バクテリア細胞密度が減少する傾向が見られ、今後検証すべき課題であると思われた。また、培養実験に用いるための有明海産Chattonella antiqua株を新たに確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は八代海でシャトネラ赤潮が発生しない場合に備え、有明海でも同時に海洋調査を行うことを予定している。平成24年度の研究で実施できなかった Chattonella antiquaおよびChattonella marinaの混合栄養性を確認し、その餌となりうる生物の特定を引き続き行う。現場のC. antiquaとC. marina細胞を用いてメタゲノム解析を行うことによって餌生物を推定する。また、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって推定された餌生物がシャトネラ細胞内に取り込まれているかを確認する。 低栄養塩濃度での摂餌実験は、まず十分な栄養塩濃度でC. antiquaを大量に増殖させ、フィルターを用いて周囲の培地を低栄養塩濃度に置換していくことによって行う予定である。多くの月で、捕食者を除いた自然海水にC. antiqua培養株を添加すると、バクテリア細胞密度が減少する傾向が見られた。このバクテリア細胞密度の低下が摂食によるものであるのか、他の要因によるものであるのかを検証する。C. antiqua培養株を添加時にバクテリア現存量だけでなく、シアノバクテリアおよびピコ植物プランクトンの現存量の変化を明らかにし、摂餌選択性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費してハイブリダイゼーションを行うための恒温庫、メタゲノム解析用試薬、FISH用試薬・消耗品の費用として50万円を使用する。旅費は、福井県立大学のTEMを使用するため、熊本―福井県小浜の往復旅費および国内学会(首都圏)の旅費として30万円を使用する。人件費・謝金として八代海および有明海の傭船を依頼するための費用として20万円を使用する。その他に、蛍光プローブを作成のための依頼費および学会誌投稿料等の研究成果発表費用として30万円を使用する。
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Research Products
(3 results)