2013 Fiscal Year Research-status Report
有害赤潮プランクトン・シャトネラの摂餌による赤潮の発生・維持機構の解明
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24780191
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (30601918)
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Keywords | シャトネラ / 赤潮 / 混合栄養 / 八代海 |
Research Abstract |
[現場シャトネラ赤潮の摂餌動態] 昨年度に引き続き、シャトネラの出現動態および摂餌特性を把握するため、八代海および有明海で現場調査を行なった。有明海では<10-160 cells L-1でシャトネラが出現したものの、赤潮となるほどの高密度のシャトネラを捉えることができなかった。また、八代海ではシャトネラは出現しなかったため、摂餌特性の検証を行うことはできなかった。 [シャトネラの摂餌特性] シャトネラによる摂食の影響を評価するため、八代海産Chattonella antiqua培養株に、餌生物としてシアノバクテリアSynechococcus sp. 株を2.4×104(×500区)-1.2×107 cells mL(×1区)になるよう添加して培養実験を行なった。培養後、×1区および×500区はC. antiquaを加えないコントロール区と差がみられなかったものの、×10区および×50区ではコントロール区と比較してSynechococcus sp.細胞密度が有意に低かった。このことは、シャトネラの摂餌によってSynechococcus sp.の増殖が抑制されたことを示唆している。C. antiquaは他の植物プランクトンの増殖を抑制するアレロパシー様物質を放出することが知られているため、Synechococcus sp.の増殖を抑制した可能性もあると考えられた。×1区ではSynechococcus sp.の細胞密度が高く、C. antiquaが凝集体を形成したため、Synechococcus sp.の増殖に影響を与えなかったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は有明海においてシャトネラ赤潮が発生したものの、出現動態および摂餌特性を把握することができなかった。これは、シャトネラ赤潮発生期間が約2週間と短く、有明海と八代海の2海域で月1回ずつ行っている定期的な調査では把握できなかったためである。 摂餌実験によって、C. antiquaの添加はシアノバクテリアの増殖速度に影響を与えることが明らかとなった。シャトネラ属のプランクトンは摂食だけではなく、アレロパシー様物質もしくはプランクトン同士の接触によっても、他の植物プランクトン現存量を減少させることがしられている。どのような影響によってC. antiquaがシアノバクテリアの増殖速度を低下させるのかは、今後検証すべき課題であると思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に引き続き有明海および八代海で同時に海洋調査を行う。また7月、9月には有明海で24時間観測を予定しており、シャトネラ赤潮を捉えることを目指す。平成25年度の研究で実施できなかった Chattonella antiquaおよびChattonella marinaの混合栄養性を確認し、その餌となりうる生物の特定を引き続き行う。現場のC. antiquaとC. marina細胞を用いてメタゲノム解析を行うことによって餌生物を推定する。 摂餌実験では、シャトネラの添加によってシアノバクテリアの増殖が抑制されることが明らかとなった。今後、アレロパシー様物質等の影響を検証するため、シャトネラ培養液をシアノバクテリア培養液に添加するなどの実験を行っていく。 予備実験で、C. antiqua培養株にラテックスビーズを添加し、C. antiqua細胞にビーズが付着する様子が観察された。同属のChattonella ovataでは細胞表面に餌生物を付着させ、細胞内に取り込むことが知られている。今後より詳細にC. antiqua細胞の観察を行い、混合栄養性の検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
赤潮発生時の現場サンプルの取得に成功しておらず、ハイブリダイゼーションを行うための恒温庫および試薬が未購入なためである。また他研究室で解析を行うための旅費を未使用なためである。 物品費してハイブリダイゼーションを行うための恒温庫、メタゲノム解析用試薬、研究用試薬・消耗品の費用として70万円を使用する。旅費は、福井県立大学のTEMを使用するため、熊本―福井県小浜、熊本の往復旅費および国内学会(首都圏)の旅費として40万円を使用する。人件費・謝金として八代海および有明海の傭船を依頼するための費用として30万円を使用する。その他に、学会誌投稿料等の研究成果発表費用として10万円を使用する。
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Research Products
(2 results)