2013 Fiscal Year Research-status Report
キンギョのまだら模様体色パターン形成における体色調節ホルモンの役割
Project/Area Number |
24780192
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
水澤 寛太 北里大学, 水産学部, 講師 (70458743)
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Keywords | キンギョ / 皮膚 / 鱗 / 体色パターン / 体色変化 / 色素胞 / ホルモン / 受容体 |
Research Abstract |
黒色素胞刺激ホルモン(MSH)とメラニン凝集ホルモン(MCH)は硬骨魚類の皮膚色素胞における色素運動を調節し、生理学的体色変化を引き起こすホルモンである。MSHは色素胞の分化も誘導し、形態学的体色変化も引き起こす。本研究はシュブンキンやニシキゴイに特徴的な体色のまだら模様形成におけるこれらのホルモンの役割の解明を目的とする。今年度は黄色素胞を持ち、黒色素胞を持たないワキンの鱗をモデルとして、MSH受容体(MC1RとMC5R)とMCH受容体(MCHR2)の発現分布と動態の解析、ならびにMSH遺伝子の新たなサブタイプの検索を行った。 ワキンの鱗においてホルモン受容体が黄色素胞特異的に発現しているか否かをマイクロダイセクションと逆転写PCRの組み合わせによって検討した。しかしこの方法ではmRNAを検出することができなかった。そこで鱗のホールマウントin situハイブリダイゼイション(WISH)を行った。その結果、MC1RとMC5Rが黄色素胞において発現することが明らかとなった。 ワキンを黒背景または白背景下において一定期間飼育した。鱗1枚当たりの黄色素胞数を光学顕微鏡観察により算出した。また鱗内のMC1R、MC5R、MCHR2 mRNA含量をリアルタイムPCR法により測定した。その結果、背馳応答による体色変化には生理学的体色変化に加えて形態学的体色変化も寄与すること、その際の形態学的体色変化に黄色素胞におけるこれらのホルモン受容体発現量の変化が連動することが示唆された。 MSH遺伝子のサブタイプを新たに2つ、cDNAクローニングによって同定した。これらのサブタイプは、既知のサブタイプに比べてMSHのアミノ酸配列が異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ワキンの鱗において発現するMCRのWISHによる検出法を確立した。本法はシュブンキンおよびニシキゴイの鱗にもそのまま応用できる可能性が高い。また、黒または白背景飼育によるワキンの形態学的体色変化とホルモン受容体の発現変動は、シュブンキンにおいても同様に起こることが期待される。シュブンキンにおいてまだら模様を形成する色素胞には黄色素胞の他に黒色素胞があり、また虹色素胞の分布も光の反射の差を生み出す重要な要素である。本研究の結果は、シュブンキンにおけるこれらの色素胞の消長とホルモン受容体の発現動態の関連を検証する重要な足掛かりとなるものである。 MSH遺伝子を解析する過程で、本遺伝子の新たなサブタイプを2つ同定した。これは本研究の想定外であった。興味深いことに、これらのサブタイプから生じるMSHは既知のサブタイプから生じるMSHと異なるアミノ酸配列を持つ。したがって新たなMSHは色素胞に対して既知のものと異なる活性を示す可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
シュブンキンの鱗におけるMC1R、MC5R、MCHR発現細胞をWISHによって同定する。またシュブンキンを黒または白背景飼育し、鱗における各色素胞の消長とこれらのホルモン受容体の発現動態を明らかにする。以上について、体色のまだら模様を形成する鱗のタイプとの関連を検討する。 新たに同定したMSH遺伝子サブタイプが体色変化に関与するか否かを検討する。そのために、リアルタイムPCRによる定量系を作成して、背景色による発現応答を明らかにする。またMSHを生合成して色素胞に対する活性を薬理学的に解析する。
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Research Products
(10 results)