2013 Fiscal Year Research-status Report
雌性先熟魚類に対する現行の漁業は適切?:繁殖生態に基づいた適切な漁業管理策の検討
Project/Area Number |
24780195
|
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
佐藤 琢 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (20455504)
|
Keywords | 雌性先熟魚類 / 漁業管理 / 性転換 |
Research Abstract |
熱帯、亜熱帯域の沿岸資源には雌性先熟魚類が多くみられ、そのような種では大型個体は雄として資源の再生産に大きく貢献する。しかし、現行の漁獲規制(体サイズ規制)のもとではこのような大きな雄ほど漁獲対象となりやすい。雌性先熟魚類では、漁獲等によって雄が消失した場合、集団中の大きな雌が雄へ性転換することが知られているが、機能的な雄となるにはある程度の期間を要すると予想される。そのため、繁殖期直前および繁殖期中の雄の漁獲は資源の再生産に悪影響を与えることが懸念される。 そこで本研究では、雌性先熟魚類であるシロクラベラをモデル魚種として、繁殖期直前および繁殖期中における雄の漁獲が雌性先熟魚類資源の再生産に与える影響を水槽実験によって調べることを目的とした。 実験群は1群あたり4個体とし、使用する個体サイズは漁獲物組成を参考にした(体長約60 cm以上の雄1尾、体長55 cm程度の大型雌1尾(性転換可能な体サイズ)、体長50 cm以下の小型雌2尾)。実験群からは繁殖期直前、もしくは繁殖期中に雄を取り除き、雄の漁獲を再現した。それによって、1) 雌は繁殖期のいつでも性転換が可能か?や、2) 性転換個体が雄として機能するのに要する期間、 3) 性転換直後の雄としての繁殖能力について現在調べている。 これまでの途中結果を概説すると、繁殖期直前および繁殖期中に雄を除去すると、その集団から繁殖期中に産出される総受精卵数が著しく低下し、多くの場合、雌は繁殖期中に雄への機能的性転換を完了できなかった。繁殖期直前に雄を除去した場合、これまで1例のみ雄への機能的性転換が観察されたが、性転換直後の雄としての繁殖能力は低く、受精率が低かった。 本研究課題の成果は、シロクラベラに限らず、他の雌性先熟魚類資源においても、現行の資源利用方法に対する評価や資源管理策を構築の際に有用な情報となり、それら資源の漁業管理に貢献する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、当研究課題はデータ収集中であるが、その進捗に問題は無く、計画通りにデータを収集できているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2011年度、2012年度に引き続き、2013年度もこれまでと同様の実験を行うことによりサンプル数の充実を図り、データの信頼性をあげる計画である。現在のところ、実験計画に変更予定はない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
飼育魚に与える餌料を冷凍保存しておくべき、研究機関の大型冷凍庫の設備を更新する工事が長期間にわたって入ったことに起因して、餌料の納入時期を計画より遅延するという変更が必要となったため。 生じた「次年度使用額」は、納入の遅れた餌料の購入にあてる。
|