2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
長谷川 功 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所, 研究員 (00603325)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 種間競争 / ブラウントラウト / ニジマス / 外来種 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ある外来種の定着の成否には、同所的に生息する別の外来種との種間競争が影響するという新しい外来種定着メカニズムの提唱を目指すことである。そのために、北海道南西部を流れる尻別川水系で、外来サケ科魚類であるブラウントラウトとニジマスを対象に野外調査を行い、両種の分布パターンから種間競争の影響について考察する。本研究の対象とする外来種2種は、シロザケなどの水産資源として重要なサケ科魚類への影響が懸念されている。したがって、本研究の成果は、外来種定着メカニズムの解明という保全生態学上の重要課題の解決に対して貢献するだけでなく、効果的なサケ科魚類の資源管理策を考案する際の重要な基礎的知見にもなる。 本年度は、尻別川水系の5支流(パンケ目国内川・目名川・クトサン川・昆布川・ソウスケ川)で両外来種の分布調査を行った。その結果、昆布川とソウスケ川では両外来種、クトサン川ではニジマスのみが分布していた。しかし、パンケ目国内川と目名川には外来種は分布していなかった。分布パターンから種間競争の影響を考察するために、少なくとも20支流での調査を予定している。本年度に調査を出来た支流はやや少なかったものの、来年度以降の調査で十分に挽回できる程度のデータ収集は行うことができた。また、副次的成果として、水産重要種であるサクラマス(ヤマメ)は、いずれの支流においても生息密度が高いこと、クトサン川で在来種アメマスとブラウントラウトの交雑個体を発見したことがある。特に、サクラマスは尻別川本流に設置されている魚道付きダムの上流側に位置する支流(クトサン川・昆布川・ソウスケ川)でも分布が確認された。このことは、魚道設置による親魚遡上の促進は、サクラマス個体群の回復・維持に有効であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天候不順により計画通りの野外調査を終えることはできなかったものの、進捗状況の遅れは想定の範囲内であり、来年度以降の調査で十分に挽回できる程度である。また、副次的成果でも興味深い知見が得られた。これらを総合的に判断して進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、24年度と同様の野外調査を実施し、データ収集に努める。また、副次的に得られた成果である「尻別川本流の魚道付きダムとサクラマスの分布の関係」および「アメマスとブラウントラウトの交雑魚の出現状況」についても情報を収集したい。特に、後者については、自身のこれまでのデータと合わせて考えると、交雑魚の出現頻度は河川によって異なる可能性も出てきたことから、他河川についても交雑魚の出現状況を調査し、交雑魚の出現と河川環境の関係について考察を試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、主に物品購入費が予定よりも少額で済んだため、次年度への繰越金が生じた。そこで、25年度は繰越金をハンガリーで8月に開催される世界陸水学会へ参加するための経費(参加費・旅費)と交雑魚の出現状況に関する調査の費用に充てたい。交雑魚の出現状況調査については、北海道内だけでなく、長野県松本市、栃木県日光市での調査も予定している。
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Research Products
(7 results)