2012 Fiscal Year Research-status Report
深海産イソギンチャクの新規ペプチド毒の探索、構造解析、作用機構に関する研究
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24780205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University Junior College |
Principal Investigator |
本間 智寛 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90435272)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 深海産イソギンチャク / ペプチド毒 / サソリ毒 / Kチャネル毒 / Naチャネル毒 |
Research Abstract |
隠岐の島沿岸に生息する深海産イソギンチャク(Cribrinopsis sp.)から、サワガニに対する毒性を指標にして、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相HPLCによって単離した6成分の新規ペプチド毒(Jiibo I-VI)の内、非常に強い麻痺活性を示したJiibo IIIと致死活性を示したJiibo VIについて、3'Race法と5'Race法によるcDNAクローニングを行い、その一次構造を決定した。 Jiibo IIIのアミノ酸配列を相同性検索したところ、サソリのKチャネル毒と高い相同性を示した。また精製したJiibo IIIのサワガニに対する麻痺活性は極めて強く、ED50は2.8μg/kgと算出され、これは過去に単離したイソギンチャクの麻痺毒のなかで、最も強い活性を示した。一般に、ペプチド性イオンチャネル毒のチャネルへの結合には、荷電を帯びたアミノ酸残基が重要な役割を果たしているが、Jiibo IIIでもサソリ毒とほぼ同じ位置に荷電を帯びたアミノ酸残基が保存されていた。Jiibo IIIはその残基数からも、人工合成が容易であり、薬理学的な作用が明らかとなれば、医薬品としての応用の可能性を秘めている。 次にJiibo VIの配列を相同性検索した結果、Jiibo VIは既知のイソギンチャクのNaチャネル毒のタイプ1のグループにも、またタイプ2のグループにも相同性を示し、タイプ1と2の中間的なアミノ酸配列を有していることが判明した。このようなタイプ1と2の中間的な配列を有したペプチド毒は、同じく深海産イソギンチャクのカワリギンチャク(Halcurias sp.)から単離された1例しか報告がない。深海産イソギンチャクから、従来のタイプとは異なるNaチャネル毒の配列が相次いで単離されたことは、イソギンチャク毒の分子進化の観点から非常に興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画において、海洋生化学資源としてのイソギンチャクのさらなる有効利用を目的として、各種イソギンチャク粗抽出液について、溶血活性、プロテアーゼ阻害活性、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性、トロンビン阻害活性、細胞極性への作用などを指標にスクリーニングを行う予定であったが、思うように実施できなかった。また本研究においては、イオンチャネル毒性の新しいアッセイ法の試みとして、Biacore 3000を用いた競合阻害実験によるアッセイ法の確立が大きな目的の一つであるが、本年度はその条件検討の段階までしか進まなかった。上記課題については、次年度の早い時期において、解決するように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 深海産イソギンチャクにおける新規ペプチド毒の単離と構造解析 各種深海産イソギンチャクから粗抽出液を調製し、サワガニに対する毒性を指標に毒成分を探索する。さらに、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相HPLC、イオン交換HPLC、低圧クロマトグラフィーシステムなどにより新規ペプチド毒を単離する。またその構造解析は、プロテインシークエンサーおよびcDNAクローニングによって行う。cDNAクローニングは、既知アミノ酸配列をもとにRACE法で行い、cDNAおよび前駆体タンパク質の構造上の特徴を明らかにする。 2. 新規ペプチド毒の作用機構の解明 新規ペプチド毒の作用機構は、既知の各種ペプチド毒と新規ペプチド毒との間で起こるラット脳から調製したシナプトソームに対する競合阻害をBiacore 3000によって測定し、作用するイオンチャネルを特定する。またより詳細な作用機構については、パッチクランプ法による毒性試験を行う。 3. イソギンチャクの新たな有用生理活性ペプチドのスクリーニング 海洋生化学資源としてのイソギンチャクのさらなる有効利用を目的として、各種イソギンチャクの粗抽出液について、溶血活性、プロテアーゼ阻害活性、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性、トロンビン阻害活性、細胞極性への作用などを指標にスクリーニングを行う。またBiacore 3000による競合阻害実験も行い、各種イオンチャネルに対する阻害能も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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