2013 Fiscal Year Research-status Report
深海産イソギンチャクの新規ペプチド毒の探索、構造解析、作用機構に関する研究
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24780205
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Research Institution | Tokai University Junior College |
Principal Investigator |
本間 智寛 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90435272)
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Keywords | 深海産イソギンチャク / ペプチド毒 / Metridin / ShK / Kチャネル毒 |
Research Abstract |
4種深海産イソギンチャク(ダーリアイソギンチャク、フウセンイソギンチャク、Actinostola sp.、Metridium sp.)について、新規ペプチド毒の探索を行った。粗抽出液の各種動物赤血球(ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ)に対する溶血活性およびサワガニに対する毒性を測定したところ、溶血活性はMetridium sp.のみに認められ、サワガニに対する毒性はダーリアイソギンチャク、Actinostola sp.、Metridium sp.の3種に認められた。そのうち比較的強いサワガニ毒性を示したMetridium sp.からは、この毒性を指標にして、サイズ排除クロマトグラフィーおよび逆相HPLCに順次供して精製を行ったところ、サワガニに麻痺活性を示すペプチド毒Toxin Iを単離した。N末端アミノ酸配列から、過去にヒダベリイソギンチャクMetridium senileから単離されている溶血毒metridinと非常に高い相同性を有することが判明した。 Metridinは、1987年にドイツのKrebsらによって、溶血活性をもつペプチド毒として、ヒダベリイソギンチャクから単離された。単離後の詳細な研究は行われていないが、metridinの名前は「metridin-like ShK toxin domain」として知られており、イソギンチャクStichodactyla helianthusから単離されているKチャネル毒ShKと共通のドメインを有している。Metridinには溶血活性以外の報告はないが、本研究で単離したmetridin様ペプチド毒のToxin Iはサワガニに比較的強い麻痺活性を示しており(ED50 560μg/kg)、他のイソギンチャク由来のKチャネル毒と同程度の活性の強さを示していることから、新規Kチャネル毒である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては、イオンチャネル毒性の新しいアッセイ法の試みとして、Biacore 3000を用いた競合阻害実験によるアッセイ法の確立が大きな目的の一つであるが、本年度も昨年度同様に、その条件検討の段階に留まってしまった。最終年度である次年度ではBiacore 3000によるアッセイ法を確立して、各種深海産イソギンチャクの粗抽出液に対するスクリーニングを行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 深海産イソギンチャクから単離した新規ペプチド毒の構造解析 これまでに単離した新規ペプチド毒の一次構造の解明は、プロテインシークエンサーおよびcDNAクローニングによって行う。cDNAクローニングは、既知アミノ酸配列をもとにRACE法で行い、cDNAおよび前駆体タンパク質の構造上の特徴を明らかにする。 2. Biacore 3000による競合阻害実験の確立 新しいチャネル毒性を有する新規ペプチド毒のスクリーニング法として、 Biacore 3000による競合阻害実験を確立し、各種深海産イソギンチャクの粗抽出液に対するスクリーニングを行う。 3. 新規ペプチド毒の作用機構の解明 これまでに単離した新規ペプチド毒の作用機構は、既知の各種ペプチド毒と新規ペプチド毒との間で起こるラット脳から調製したシナプトソームに対する競合阻害をBiacore 3000によって測定し、作用するイオンチャネルを特定する。またより詳細な作用機構については、研究協力者であるルーヴァン・カトリック大学のJan Tytgat教授とともに、パッチクランプ法による毒性試験を行う。
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