2013 Fiscal Year Research-status Report
協働型自然資源管理に資する地域ネットワークの効率的構築
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24780211
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
松下 京平 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20552962)
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Keywords | ネットワーク / 恊働 / 自然資源管理 |
Research Abstract |
平成25年度は、広島県北広島町芸北地区で展開される協働型自然資源管理の具体的事例として、地域住民の視点から見た雲月山草原の維持管理のあり方を聞取り調査およびアンケート調査をもとに実証分析を行った。得られた知見は以下の通りである。 第一に、若年層は高齢層よりも草原保全に対して積極的である。自然資源に近接する地域の住民はそうでない住民よりも草原保全に積極的である。第二に、草原の活用方法として、地域住民は子どもたちの学習・いやしの場として草原を活用することを望んでいる。さらに、小学生以下の子どもがいる世帯は、いきものの生息地としての草原に価値を見出していることも分かった。第三に、住民が考える草原保全の中心的担い手は、町長などの集落代表者の経験がある回答者ほど行政主導の草原保全を好む一方、地域内に友人・知人などのネットワークが幅広く構築されている人はむしろ住民やNPO・ボランティアが主体となった草原保全を望むことが分かった。 今後の草原管理を考える際、その草原に日常的に接する地域住民の視点は極めて重要な意味を持つ。今年度の研究で得られた地域住民の視点、すなわち「どのような地域住民」が「どのような草原の活用方法を望み」、また「誰が中心となって管理していくべき」と考えているのか等は、地域の実情に沿った住民主導型の草原保全計画を今後立案していく上できわめて重要な知見をもたらすものと考えられる。 以上の研究成果は、2013年11月30日に開催された農村計画学会秋季大会において口頭報告として発表し、「地域住民による雲月山草原の経済価値評価」として農村計画学会論文特集号第32巻に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、平成25年度は平成24年度の基礎的調査を踏まえ、芸北地区において展開される自然資源管理のあり方とそれに関連する地域住民のネットワーク構造を把握することにあった。この点に関して実際の進捗状況は、芸北地区に精通し地域住民と密な交流を有する研究協力者と連携しつつ、地域の各世帯を対象としたアンケート形式の悉皆調査および各地区の班長・区長に対する聞取り調査を実施し、詳細な分析データを回収すると同時にその解析を実施した。また分析より得られた知見は学会での口頭報告や論文発表ならびに協力して頂いた地域住民の方への報告という形で広く社会に還元した。以上より、当初の研究計画で予定していた以上のことを平成25年度は実施できたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画としては、平成25年度に得られた知見を地域住民に還元すると同時に、その解釈の妥当性について地域住民の考えを詳細に聞き取ることが必要と考える。また、研究対象である雲月山草原の維持管理には、多くの地域外ボランティアが参加しており、彼らも草原を持続的に保全・管理していく際の重要な関係者と考えられる。これからの草原管理の在り方を検討する際、地域住民とボランティアがそれぞれどのような形での草原保全・利用を考えているかを互いに認識することは重要である。そこで今年度は、雲月山草原のボランティアの保全意識を検証し、地域住民の意識との相違点もしくは共通点を比較していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
受入項目「その他」に計上していた当初予算のうち会議費・自動車レンタル費・印刷費が予定以上に小さかったため、約18万円の残額となった。その一方で、詳細な現地調査(聞き取り調査、アンケート調査、調査で得られた知見の現地へのフィードバック等)を実施するための研究協力に係る人件費として謝金が当初の研究計画以上に必要となったため、受入項目「その他」の残額で一部補填した。その収支の結果として、次年度使用額として残額が生じた。 次年度使用額については平成26年度に実施する予定の追加的な現地調査(聞き取り調査・アンケート調査・現地への知見のフィードバック)ならびに成果報告の諸経費として利用する。
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Research Products
(2 results)