2014 Fiscal Year Research-status Report
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24780212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 淳史 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00402826)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農民政策 / 石黒農政 / 基本法農政 / 農業移民 / 戦後開拓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度における単著の刊行を踏まえ、第1の課題として、日本農政の事例に基づく総力戦体制論の再検討、第2の課題として、GHQ天然資源局(NRS)文書の分析による占領期日本農政に関する検討を行った。その結果、まず第1の課題については、戦時農政における政策意図と実態は大きく乖離しており、総力戦体制論は日本「内地」および制度・言説に関する局面にしか適用しえないことを指摘した。次に第2の課題については、1.占領期の農業問題としては国内世論だけでなくNRSの認識においても食糧問題が大きなウエイトを占めていたが、2.南朝鮮への肥料供給は日本の農業生産の制約要因となり、朝鮮情勢が日本の食糧問題に甚大な影響を与えていたこと、また3.占領による改革の帰趨は日本側の条件によって大きく左右されたこと、を明らかにした。以上をもとに、「日本史」研究に対する含意として、第1に戦時と戦後の関係については単に外形的な「連続と断絶」を議論するのではなく実態との落差を前提として、落差が生じるメカニズムを検討する必要があること、第2に占領政策研究あるいは占領後の農業政策研究において、従来の日本―アメリカに限定された枠組みを抜け出す必要があることを指摘した。人や物の動きに着目して従来の農業史研究・「日本史」研究の見解を問い直すことは、1990年代以降長らく接点を失っていた双方の研究が再び生産的な対話を開始する手がかりになりうると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に今後の課題として示した、日本農政の事例に基づく総力戦体制論の再検討や、単著において考察が欠けていた占領期日本農政に関する考察は本年度に遂行できたと考えている。ただし、占領後の農業政策については依拠資料や研究方法も含めいまだ検討段階にあり、現段階では試論として見通しを示すにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
占領後の農業政策を検討するために、次年度は外務省外交史料館所蔵の外交文書を用いた検討を行いたい。申請者は以前農業移民政策について外交文書による考察を行っているが(拙著『日本農民政策史論』第3章)、その後の外交文書公開にて新たに戦後の農業開発プロジェクトに関する文書が公開されている。「要審査」とされた文書の公開には時日を要するが、申請者はこれらについて既に閲覧申請手続きを済ませており、年度内に閲覧ができる見込みである。
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Causes of Carryover |
おおむね研究計画通りに研究を遂行したが、3月末の外務省外交史料館への出張時に資料複写費用が発生しなかったため(デジタルカメラによる撮影の許可)、残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、次年度の資料調査におけるマイクロフィルム等デジタルカメラ撮影が不可能な資料に関する複写費用に充てることとしたい。
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