2013 Fiscal Year Research-status Report
消費者の多様な食品購買行動における広告情報の効果に関する計量的研究
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24780221
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
岩本 博幸 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90377127)
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Keywords | 消費者選好 / 広告情報 |
Research Abstract |
平成25年度における研究課題として、具体的に次の2点を設定した。第1に、時系列購買データを入手して広告表示における第2に、広告情報が消費者の購買行動に与える効果を検討するために、表明選好アプローチのひとつである選択実験による評価分析を試みることである。 第1の課題については、宅配型生協から時系列購買データを入手してその購買データと関連づける広告の類型化等の整理を試みた。 第2の課題については、畜産物(豚肉)を評価対象財として、アニマルウェルフェアおよび環境表示としてのエコフィードを評価対象属性とした選択実験を実施し、Choice Modellingによる分析を試みた。具体的には、事前に広告情報としてアニマルウェルフェアおよびエコフィードの定義と本分析における具体的な内容、社会的意義に関する情報を与えた消費者の回答群と事前の広告情報を与えない消費者の回答群を設定し、選択実験を試みた。アニマルウェルフェアおよびエコフィードを分析対象とした主な理由として、消費者が一般的になじみが少なく、広告情報の有無による評価の差違が観察されやすいことなどが挙げられる。 分析の結果、事前の広告情報が提示されていない回答者群においても、アニマルウェルフェアおよびエコフィードに対する評価は肯定的であることが示された。また、広告情報を事前に提示された回答者群では、アニマルウェルフェアに対する評価が情報提示を受けていない回答者群に比べて統計的に有意に評価が高い結果となった。一方、エコフィードに対する評価については、統計的な有意差を確認することができなかった。 このような広告情報の効果の差違が取り上げる評価項目によって生じるのかについては、次年度以降引き続き検討する必要があり、食品安全、環境、栄養など食品における広告を通じた普及啓発といった社会的還元性を高めるためには、重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、広告表示の提供方法が多様な消費者の購買行動に与える効果について、顕示選好データおよび表明選好データから実証分析を通じて明らかにすることにある。 これまでの研究から、顕示選好データとして宅配型生協における購買データをパネルデータとして入手、整理分析を試み、プレテスト的な表明選好データの収集・分析によって最終年度に向けた調査研究の基礎的な分析を完了させつつある。しかしながら、理論的な分析フレームワークの設定および購買データの分析について不十分な点があることから、「おおむね順調に進展している」と評価した。 理論的な分析フレームワークの設定および購買データの分析については、顕示選好データと表明選好データとの接合についての技術的な問題が生じていることに主な原因があることから、個別に分析を進めることも視野に入れつつ改善を試みることで最終年度での研究完了は十分可能と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度における研究課題は、2点に要約される。第1に、昨年度から引き続き、時系列パネルデータである購買行動データの分析を実施する。第2に、食品安全リスクを対象とした広告表示が消費者の購買行動に与える効果について表明選好アプローチによる実証的な解明をはかるとともに、その他の消費者行動上、関心が高いと予想される環境問題や健康・栄養情報についても検討を行い、本研究課題の総括を行う。 本年度の研究遂行上、予想されるリスクとして、消費者の社会経済的な属性ならびに、心理的な認知が購買行動に与える影響を捉えることが、昨年度までの分析手法では困難となる可能性である。その際には、共分散構造分析等の分析手法も援用して解決を試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算支出が必要なアンケート調査はおおむね順調に実施されている。一部、結果検討に関する出張等の必要がなくなったことから、次年度使用額が生じている。 食品消費におけるより広範な課題を分析することを目的として、小規模調査をさらに追加実施することを計画している。また、平成26年度の国内学会報告を追加することに充てることを計画している。
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