2012 Fiscal Year Research-status Report
雇用型耕種経営における生産工程管理の経営改善効果に関する実証分析
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24780227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
田口 光弘 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部 総合企画調整部 研究戦略チーム, 主任研究員 (90391424)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | GAP(農業生産工程管理) / 雇用型法人経営 / 経営改善効果 |
Research Abstract |
平成24年度に実施した研究の成果は、次のとおりである。(1)JGAP 認証農場を対象としたアンケート調査を実施し、GAP(農業生産工程管理) の導入は、従業員の意識改善に大きく寄与しており、特に、農場のPDCA において従業員の関与が高くなるほど、その傾向が強くなることを明らかにした。そして、従業員の意識改善により、計画的な生産や品質向上、販売改善が図られることを明らかにした。また、GAPの導入における問題点としては、各種記録・データ収集の煩雑さや、消費者のGAP認知度の低さが挙げられた。(2)JGAP 認証農場3事例を対象とした聞取り調査を実施し、GAP導入経営体における具体的な工程管理(PDCAサイクル、各種データの収集・活用)の手順や、その運用に当たる組織体制(役割分担、権限委譲)について明らかにした。 これらは、本研究の第一の目的である「耕種経営で取り組まれている生産工程管理の実態と問題点の把握を行う」に則した研究成果であり、また第三の目的である「工程管理の導入による経営改善効果を定量的に評価し、類型別に生産工程管理の実施手順とそこでの留意点を提示する」を達成するための基礎となる成果である。 平成24年度の研究実施計画では、(1)生産工程管理の実態についてアンケート調査により実態と問題点の概要把握を行う、(2)このアンケート調査により工程管理の導入に伴う経営改善が図られた経営を特定し、それらについて作業管理や資材管理など生産工程管理の詳細に関する聞取り調査を実施するとしているが、この計画に対しても概ね順調に達成していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)アンケート調査および聞取り調査により、耕種経営で取り組まれている生産工程管理の実態と問題点の把握を行う、(2)経営部門および工程管理の実施方法の違いにより対象事例を類型化し、観察分析やタイムスタディ等により、各類型の工程管理の特徴を解明する、(3)工程管理の導入による経営改善効果を定量的に評価した上で、類型別に生産工程管理の実施手順とそこでの留意点を提示するの3つであるが、平成24年度に実施した研究により、(1)の目的を達成するとともに、(3)の目的を達成するための基礎となる成果を生み出した。 これらの理由から、研究の達成度は上記のとおりとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成24年度に実施した調査結果を基に、経営部門3部門・工程管理の実施方法2パターンによる合計6つの類型について2事例ずつ、合計12事例に対し、経営者や従業員に対する聞取り調査を基に、次の点を解明する。なお、経営部門3部門は、水田作経営、施設野菜作経営、露地野菜作経営であり、工程管理の実施方法2パターンとは、生産計画の決定や日々の作業統制に関し、①従業員はあまり関与せず、経営者が進めていく「トップダウン型」と、②作業班の班長など現場の管理者に多くの意思決定を委ねる「権限委譲型」である。 調査項目:1)経営概要と組織体制。2)生産計画の決定手順。3)作業班の編成や各作業者の作業内容の決定手順。4)生産における点検・改善活動の内容。5)GAP導入による従業員の意識の変化。6)GAP導入による経営改善効果の内容。 最終年度においては、前年度までの分析結果と工程管理導入前からの作業記録等を基に、次の4点について、どのように、またどの程度経営改善が達成されたのか検証する。1)従業員の意識改善:自主性や責任感の向上、従業員間の意思疎通。2)計画的生産の実現:作業遅延の減少、欠品や在庫の減少。3)品質の改善:等級・規格の向上、クレーム数の減少。4)販売の改善:売上の変化、販路の拡大、販売単価の変化。 最後に、経営部門や管理場面ごとに、上記の経営改善効果の発現状況を工程管理の実施方法間で比較することにより、効率的な工程管理の手法として、生産工程管理の実施手順と、そこでの留意点を提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じたが、これが生じた理由は次の2点である。1)計画当初では聞取り調査を12事例予定していたが、先方との都合が合わなかったたため、3事例しか回ることができなかった。2)平成25年度に実施する予定であった農業機械と農作業者の動線分析のために、GISソフトウェアとGPSデータロガーを購入する予定であったが、アンケート調査や聞取り調査から、工程管理導入による経営改善効果は動線に表れるよりも、上記の推進方策に書いたように、1)従業員の意識改善、2)計画的生産の実現、3)品質の改善、4)販売の改善に表れることが分かったため、GISソフトウェアとGPSデータロガーの購入を見送ることとした。 平成25年度以降は、上記の4つの経営改善効果が発生するメカニズムと、こうした改善効果を生み出すための生産工程管理の実施手順と、そこでの留意点を提示するために、繰り越した研究費を合わせ、事例調査の事例数と回数を当初の計画よりも増やして、研究を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)