2013 Fiscal Year Research-status Report
田園地域保全に資する「自然的価値の高い農地」の評価とその政策的形成に関する研究
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24780230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 禅 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20462492)
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Keywords | 自然的価値の高い農地 / 生態系サービス / 多面的機能 / 景観のモザイク性 / Satoyama Index |
Research Abstract |
本研究は、営農を通じた適度な人為的攪乱により、農村地域の生態系や生物多様性の保全に寄与するポテンシャルを持つ農地を、田園地域保全に資する「自然的価値の高い農地」と定義し、その空間的分布及びその形成に与える政策的効果の解明を試みるものである。 昨年度までに研究対象地である滋賀県の地理情報(土地利用、植生、数値標高モデル、農地基盤)、農業統計(集落レベル)、人口統計(1kmメッシュ国勢調査値)、商業・事業所統計(1kmメッシュ)のデータを整備した。土地利用については、1976年~2006年までの過去5時点のデータについて、EEA(2005)によるLand Account(土地勘定)の手法を用いて分析し、全域の土地利用の動態とその変化傾向を把握した。これまで農地や林地は都市拡大の原資に、また林地は農地拡大の原資とされ、一貫して面積は減少傾向にあった。バブル崩壊以降も都市拡大の傾向は続いていたが、ここ10年程度でその動態に大きな変化が生じていることが明らかになった。近年は、農地は都市拡大に伴う減少と共に、耕作放棄や休耕により徐々に林地への遷移が進んでいる。 このような分析の他に、県全域を対象として500mメッシュでSatoyama Index(Kadoya and Washitani, 2011)を算出した。SIは、景観のモザイク性を表す指標であり、国内でも生物多用性の代理指標として利用でき、自然的価値の高い農地の代理指標としても活用できる。分析の結果、地域差はあるものの、SIは過去約30年の間に一貫して減少傾向にあることが明らかになった。また、SIと同じスケールで農業生態系がもたらす生態系サービスについて、調整サービスを中心に指標化を勧めた。今後は両指標をあわせてより包括的な「自然的価値の高い」農地の指標の検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の一つである、「自然的価値の高い農地の評価スキームの構築」について、既存の生物多様性指標であるSatoyama Index(SI)の算定を行うとともに、農業生態系の生態系サービスについて調整サービスを中心に指標化、算定を進めた。また、第2の目的である「自然的価値の高い農地の立地分析」も、SIや生態系サービスの算定結果とその他の空間データをもとに、どのような地理的な傾向を持つかの分析を進めつつあり、当初の計画がおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、生物多様性指標であるSatoyama Index(SI)や生態系サービス指標をもとにより包括的に「自然的価値の高い農地」の評価指標の作成を進める。また、これら指標の多寡が自然地理的条件、社会経済条件だけでなく、どのような農業環境施策により誘導できるかの検討を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた国際会議への参加を学内教務との関係で取りやめたこと,分析方法の改善によりデータ入力の一部作業が不要になったため,一部予算を次年度へ持ち越すこととした。なお,次年度使用額が生じた世による研究の遅延は生じていない。 次年度使用額については国内旅費(学会参加旅費,現地調査),その他(最終とりまとめのための補足アンケート調査の実施を予定)により支出予定である。
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Research Products
(5 results)