2014 Fiscal Year Annual Research Report
田園地域保全に資する「自然的価値の高い農地」の評価とその政策的形成に関する研究
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24780230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 禅 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20462492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自然的価値の高い農地 / 生態系サービス / 多面的機能 / 景観のモザイク性 / Satoyama Index |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、営農を通じた適度な人為的攪乱により、農村地域の生態系や生物多様性の保全に寄与するポテンシャルを持つ農地を、田園地域保全に資する「自然的価値の高い農地」と定義し、その空間的分布及びその形成に与える政策的効果の解明を試みるものである。 昨年度までに滋賀県を事例として検討したSatoyama Indexを用いた「自然的価値の高い農地」の評価スキームを、石川県にも適用し(1)農業景観のモザイク性の多寡がどのような空間的な分布特性、(2)生態系サービスの供給における特徴を明らかにすると共に、(3)中山間地域等直接支払や農地・水保全管理支払交付金のような農業環境政策がこれら「自然的価値の高い農地」の存続に与える効果を検証した。その結果、①農業景観のモザイク性は、能登半島地域において高いことが明らかになった。②「自然的価値の高い農地」の空間分布がこのような空間的特性を持ったのは、これら能登半島の大部分が中山間地域に該当し、谷津地形を多く持ち、それゆえに狭小・不整形な農地区画が多く残存していることと関係していた。③しかし皮肉なことに、農業生産条件が不利であるが故に、耕作放棄による「自然的価値の高い農地」の喪失も、同地域において多い結果となった。④これら農地は集落の近隣部において洪水制御や土砂崩壊防止、地下水涵養などの様々な調整サービスを供給しており、中山間地域の防災的な観点からもその存続は重要な意味を持っていると考えられる。⑤中山間地域等直接支払や農地・水保全管理支払交付金の実施地域は農地のかい廃率が低く、国の農業環境施策は「自然的価値の高い農地」の保全にも寄与していた。⑥その政策的効果は制度により異なり、中山間地域等直接支払は農地・水保全管理支払交付金に比べ狭小な農地の保全において高い効果的で、農地・水保全管理支払交付金は中~大規模の農地の保全に有効であることが明らかとなった。
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