2012 Fiscal Year Research-status Report
淡水レンズが存在する石灰岩帯水層の不均一性評価手法の開発
Project/Area Number |
24780238
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
吉本 周平 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所・資源循環工学研究領域, 研究員 (10435935)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地下水 / 小島嶼 / 気候変動 / 環境同位体 / 硝酸性窒素 / 炭酸塩岩帯水層 / ラドン |
Research Abstract |
平成24年度は、沖縄県の多良間島とマーシャル諸島共和国のマジュロ環礁を調査地区として、既設の観測用ボーリング孔や農家井戸などで採水調査を実施し、試料を持ち帰って主要イオン濃度を測定した。 多良間島では、主要イオンの組成が一般的な炭酸塩岩帯水層における涵養水と海水の間に分布し、帯水層中での涵養水と海水の混合を示しているとみられた。硝酸性窒素濃度は島の淡水レンズの全域で見られ、島内で面的に行われているサトウキビ栽培や肉牛の飼育による窒素負荷を反映しているものと思われた。また、マジュロ環礁のローラ島では、地下水中の硝酸性窒素がスポット的かつ比較的浅層で検出されることから、地表の窒素負荷が溶解した浸透水は、地下水面に到達すると淡水レンズ全体には混合せずに、比較的表層を流動していることが推察された。また、比較的深層において淡水と海水の混合だけでは説明できないMg/Ca比の増加が見られることから、ローラ島の淡水レンズの地下水は比較的深層において流動性が低く、長期間に亘って滞留している可能性が示唆された。 ラドン吸収フィルムを用いたラドンの測定法については、つくば市内で採取した地下水試料を用いて実験を行った。現地の湧水中に7日間設置して平衡状態にしたフィルムを試料水とともに容器に入れて持ち帰り、所定時間静置した後、フィルムをシンチレータに溶かし込んで測定した結果、持ち帰り後の静置時間が長いほどフィルムのラドン分配率が上昇した。このように、現地の地下水に設置した状態で平衡であっても持ち帰りの容器内でより高い分配率の平衡状態に移行することから、現地の地下水中の設置は省く方が測定条件を管理しやすいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、当初の計画どおり、多良間島とマジュロ環礁を調査地区として採水調査を実施し、主要イオン濃度を測定するとともに、現地に自記水位・電気伝導度計を設置した。また、ラドン吸収フィルムを用いたラドンの測定法について実験を行った。よって、本研究はおおむね順調に進捗しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、当初の計画に従い実施するが、平成24年度の結果を踏まえて更なる研究推進を図るために、地下水滞留時間の指標となるフロン類(CFCs)や六フッ化硫黄(SF6)の測定を加えることとする。 平成25年度は、再び、調査地区に設置されている観測用ボーリング孔および農家井戸を対象とした採水調査を実施する。調査地区は、平成24年度と同様に沖縄県の多良間島とマーシャル諸島共和国のマジュロ環礁を対象とする。マーシャル諸島においては、主要イオン濃度に加えて、窒素安定同位体や、実験を踏まえて決定した方法によるラドン濃度の測定、フロン類や六フッ化硫黄の測定などを実施する。また、平成24年度に設置した自記水位・電気伝導度計のデータを回収して取り纏める。これらの結果と、土地利用の分布、ボーリング柱状図などの情報をとりまとめて照合し、淡水レンズにおける地下水流動や物質輸送の状況を検討する。 平成26年度は、過年度の調査によって得られた主要イオン濃度や窒素安定同位体比、ラドン濃度、地下水位および電気伝導度の分布や経時変化をとりまとめ、洞窟やドリーネなどの空洞を有する不均一な石灰岩帯水層に存在する淡水レンズ内の地下水流動および物質輸送のメカニズムを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
採取した試料の水質分析のためにイオンクロマト溶離液、採水容器等が必要であり、消耗品費として97千円、分析補助者の賃金として70千円を見込んでいる。これに加えて、フロン類や六フッ化硫黄の分析のための役務費として162千円を見込んでいる。 また、マーシャル諸島における現地調査および成果発表・情報交換のための現地セミナーのための出張旅費として、396千円を見込んでいる。 さらに、本研究の成果の学術的価値を問うために、国内外の学会において成果を発表する。具体的には、日本地下水学会春季講演会(5月、松戸)、地盤環境に関する研究シンポジウム(8月、札幌)、国際水文地質学会大会(9月、パース)での発表を予定している。これらの旅費として265千円、参加費として110千円を見込んでいる。 次年度使用額の9,707円については、納期の都合上、前年度中に購入できなかった洋書の購入に充て、参考文献として用いることとする。
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