2012 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレス下のトマトにおける高品質安定生産に向けたネットワーク分析の応用
Project/Area Number |
24780245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
圖師 一文 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50435377)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トマト / クロロフィルa蛍光 / 塩ストレス / 温度ストレス |
Research Abstract |
ストレス指標を用いた果実品質の予測技術を確立するためには,優れたストレス指標の測定技術を確立する必要がある.そこで,本年度の当初計画は,優れた操作性を持つクロロフィルa蛍光OJIP誘導期現象測定装置を新規購入し,より信頼性の高いストレス指標測定技術を確立することであった.しかしながら,クロロフィルa蛍光OJIP誘導期現象を測定できる現有機器のデータ処理に関するプログラムを作成することで,現有機器の操作性を改善することができた.このことから,新規機器の購入によらず現有機器の有効利用が達成できた. 次に,高温(40℃)・低温(4℃)ストレスを与えたトマト葉と果実のクロロフィルa蛍光OJIP誘導期現象の変化とその変化から得られる様々なパラメーターを詳細に検討した結果,ストレスに敏感に反応するパラメーター,葉と果実の差異および低温ストレスと高温ストレスの反応の差異が明らかになった.このことから,ストレス指標としてのクロロフィルa蛍光OJIP誘導期現象の有用性の確認ならびにストレス指標を用いた果実品質の予測技術を確立するための基盤技術が確立できた. さらに,果実品質構成要素として重要なポリフェノール含量の測定法の確立を行った後,塩ストレス下で栽培したトマト果実のポリフェノール含量と抗酸化活性を測定した結果,塩ストレスによるこれらの上昇が明らかになった.今後は,他の成分含量の変化も測定しストレス指標との関連性について検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,現有機器のデータ処理に関するプログラムの作成により操作性の向上が達成できたこと,ストレス指標としてのクロロフィルa蛍光OJIP誘導期現象の有用性の確認ができたことなどから当初目的を達成できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成24年度に得られた結果を基にして,トマトに様々な環境ストレスを付与し,ストレス指標および収穫後の果実品質構成要素を測定後,ネットワーク分析を行う.具体的には以下の通りである. 1)環境ストレス付与ならびにストレス指標と果実品質の測定:トマト植物体に様々な環境ストレス(塩,乾燥,高温)を圃場条件と人工気象器内で与える.人工気象器内での実験はストレスを再現性よく正確に与えるために行い,得られた結果を圃場条件下と比較・検討する.このとき,ストレス指標として,OJIP誘導期現象など測定し,果実品質構成要素として,糖,有機酸,アミノ酸,機能性成分(アスコルビン酸,グルタチオン,トコフェロール,カロテン類,ポリフェノール類)を測定する.また,代謝産物の変動メカニズムを明らかにするために,窒素代謝関連酵素,カルビンサイクル関連酵素および活性酸素消去システム関連酵素を測定する. 2)ネットワーク分析:上記項目を測定後,ストレス毎にネットワーク分析を行い,各項目間の相互作用を明らかにする.まず,各項目間の相関分析を行い,統計的に相関のある項目を抽出する.その後,抽出された項目などを用いてネットワークを可視化する. 3) 予測モデルの作成:作成したネットワークにおいて,環境ストレスがストレス指標と果実品質構成要素間のネットワーク構造に及ぼす影響とストレス間の差異を明らかにする.その後,果実品質とつながりの多いストレス指標を抽出し,ストレス指標から果実品質の変化を予測できるかどうか検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
果実品質測定に関する実験機器の不調により,測定に用いる試薬などの購入が遅くなり,本年度中の執行が困難になったので当該研究費が生じた.今後の使用計画としては,試薬などの消耗品費として用いる予定である.
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