2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780254
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 聡 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90431353)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ルーメン微生物 / 黒毛和種 |
Research Abstract |
国内の重要肉牛品種である黒毛和種について、栄養獲得の根幹を担う第一胃(ルーメン)内微生物に関してほとんど知見が得られていない。本研究課題では黒毛和種ルーメン内での飼料分解、発酵に深く関与する主要微生物群を特定し、本品種の安定生産に寄与しうる基礎的知見を取得することを目的とした。 平成24年度は21頭の黒毛和種肥育牛から14ヶ月および26ヶ月齢時に採取したルーメン内容物を用いて、発酵パラメータと細菌叢の解析を行った。細菌叢については真正細菌(バクテリア)と古細菌(メタン菌)の両者を別個に解析した。具体的には、真正細菌は16S rRNA遺伝子、古細菌はmcrA遺伝子に着目してクローンライブラリを作製、解析した。 発酵パラメータについて、pHは6.3~7.5、短鎖脂肪酸濃度は40~70 mMで酢酸/プロピオン酸比は2.3-3.4とルーメン発酵は正常に行われていることを確認した。真正細菌叢および古細菌叢ともに既報値と比較して黒毛和種に特有と思われる結果が得られた。真正細菌ではRuminococcaceae 科が他の反芻家畜に比べて黒毛和種で検出頻度が高いという特徴が見られた。また、Real-time PCRによる定量では、他の反芻家畜で多数検出例がある主要ルーメン細菌群のほとんどは黒毛和種ルーメン内では分布量が低く、一方Prevotella 属細菌、Lachnospiraceae 科およびRikenellaceae 科に属する新規細菌群の分布量が高いことが明らかとなった。古細菌ではMethanobrevibacter属がメジャーである点は他の反芻家畜と共通であったが、Methanobrevibacter woeseiに近縁なグループや未培養グループがが多数検出されるなど、黒毛和種の古細菌叢は他の反芻家畜と異なる可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の達成目標は黒毛和種ルーメン微生物相の全体把握とコアメンバー候補の選抜としたが、概ね順調に成果が得られている。真正細菌と古細菌についてはクローンライブラリ解析とreal-time PCR定量により黒毛和種ルーメン内での分布量が高いと思われるグループを選抜できた。 さらに、真正細菌については14ヶ月齢から26ヶ月齢にかけて菌叢が変化することを確認しており、この点については当初の計画よりも順調に進んでいる。一方、真核生物についてはやや解析が遅れているものの、細菌と全く同じアプローチで解析することになるので想定外の遅れが生じる心配はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の解析で得られたデータをもとに、コアメンバーの定量と次世代シーケンサーによるハイスループット微生物相解析に着手する。コアメンバーの定量についてはクローンライブラリ解析で見つかった新規グループのPCRプライマーの設計、real-time PCR定量系の確立を行う。着目する点としては、肥育ステージの進行にともないコアメンバーの分布量がどのように変化するかを追跡する。これにより、各肥育ステージでの栄養獲得に重要な役割を担う微生物の特定をめざす。 一方、ハイスループット微生物相解析では個体ごとに定量的かつ網羅的に解析する強みを活かして産肉成績との関連を探る。同一の飼養条件下で増体や肉質に違いが見られた個体を抽出し、微生物相をハイスループット解析により特定する。産肉成績の良い個体と悪い個体で関連があるか否かを主成分分析等により解析し、黒毛和種のルーメン微生物相と産肉成績の関連を探る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に大きな変更はなく、当初の予定通り研究費の多くはハイスループット解析(外注)に充てる。その他の解析は現有機器で実施可能なので、各種消耗品や試薬類にも配分する。研究成果の発表については、国内外の学会や投稿論文を考えており、これらの参加費や投稿費も計上する。
|
Research Products
(2 results)