2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780257
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
榎元 廣文 帝京大学, 理工学部, 助教 (30609392)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 卵黄 / 脂質 / 質量顕微鏡法 / 胚 / イメージング |
Research Abstract |
卵黄中には、胚発生に必要不可欠な代謝物が含まれている。その中でも脂質は卵黄中に最も多く含まれる代謝物であり、胚発生において重要な働きをしていると考えられる。 質量顕微鏡法は、組織切片上を二次元に質量分析後、切片上の代謝物を可視化する方法であり、現在、脂質を含有する脂肪酸の違いによって可視化できる唯一の方法である。 これまでの研究で申請者は、ウズラの卵黄をモデル卵黄として質量顕微鏡法による解析を行ったところ、卵黄中の主要なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)が、濃色卵黄と淡色卵黄より構成される既知の層状構造とは異なる新規の層状構造を形成しており、このPCの層状構造は含有する脂肪酸の違いによって分類されることを発見した。申請者は、PC以外の脂質も含有する脂肪酸ごとに層状構造を形成しているものがあり、この脂質の層状構造によって胚発生中の胚への脂質の供給が調節されていると推察している。そこで平成24年度の研究では、質量顕微鏡法を用いてウズラ卵黄中のPC以外の主要な脂質の可視化を試みた。 測定条件の検討を行ったところ、マトリックスに2,5-dihydroxybensoic acidを用いたポジティブモードでの測定によってスフィンゴミエリン(SM)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、トリアシルグリセロール(TAG)を、9-aminoacridineを用いたネガティブモードでの測定によって、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)を可視化することができた。SM、LPC、TAG、PE、およびPIは、PCと同様に、卵黄中において含有する脂肪酸の違いによって特徴的な層状構造を形成しているものがあることが明らかとなった。さらに、SMは主に卵黄表面の胚盤および卵黄中心部のラテブラに分布していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、質量顕微鏡法を用いてウズラ卵黄中のホスファチジルコリン(PC)以外の主要な脂質であるトリアシルグリセロール(TAG)、コレステロール(Cho)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、スフィンゴミエリン(SM)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)の可視化を目的に研究を行った。 各脂質の測定条件の検討を行ったところ、マトリックスに2,5-dihydroxybensoic acidを用いたポジティブモードでの測定によってスフィンゴミエリン(SM)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、トリアシルグリセロール(TAG)を、9-aminoacridineを用いたネガティブモードでの測定によって、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)を可視化することができた。このように、Cho以外の主要な脂質については、含有する脂肪酸の違いによって可視化することができた。 その結果、SM、LPC、TAG、PE、およびPIは、PCと同様に、卵黄中において含有する脂肪酸の違いによって特徴的な層状構造を形成しているものがあることが明らかとなった。さらに、SMは主に卵黄表面の胚盤および卵黄中心部のラテブラに分布していることが明らかとなった。Choの可視化については、引き続き測定条件の検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、それぞれの脂質の層状構造が胚発生中の各ステージにおいて分化、形成される各器官への脂質の供給を調製している、という推察を確かめるため、胚、および各器官において増減するホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン(SM)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、トリアシルグリセロール(TAG)、コレステロール(Cho)の解析を行う。具体的には、ウズラの有精卵を孵卵器中で保温後、経時的に採卵し、解剖学的に胚、および各器官やそれら以外の卵黄部に分離する。次に、分離した各部位より脂質を抽出し、逆相のC18カラムを取り付けた高速液体クロマトグラフ質量分析装置(四重極飛行時間型、およびトリプル四重極型)を用いて各種の脂質を分子種レベルで網羅的に解析する。また、質量顕微鏡法を用いて、胚発生中の各脂質の時空間的な変化を分子種レベルで解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大型研究設備として、脂質の解析に必要な質量顕微鏡装置と液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)があるが、質量顕微鏡装置は近畿大学農学部の財満信宏講師の研究室にて、また、LC-MSは本学科に備わっている現有機器(四重極飛行時間型、およびトリプル四重極型)が使用可能であり、現在も全く問題なく使用されている。その他、生化学的な実験を行うための一般的な機器、備品に関しては、研究室の現有機器を補充することで対応可能である。したがって、平成25年度の研究費は、主にLC用のカラム、質量分析用の高グレードの薬品と高純度の標準品、および一般的なガラス器具や試薬類などの購入に使用する。また、日頃の研究成果を公表するため、あるいは研究に必要な情報を収集するための学会参加、および論文発表に係る経費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)