2013 Fiscal Year Annual Research Report
肝障害予防による乳牛の生産性向上に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24780259
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
鈴木 武人 麻布大学, 獣医学部, 講師 (90532052)
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Keywords | 乳牛 / 肝機能 / IGF-1 |
Research Abstract |
乳牛(ホルスタイン種)において、分娩予定日20日前より分娩日までRhizopus oryzae水抽出物を10g/頭/日の用量で飼料にトップドレス給与した牛群(n=8)は、分娩日以降、血中IGF-1値が対照群に対し高い傾向を示し、血中NEFA濃度は低値を示した。分娩後の初回発情までの日数は、給与群43.0±33.1日 (n=6)、対照群63.0±35.0日 (n=5)、受胎率は給与群66.7%、対照群40.0%であった。IGF-1は肝臓から分泌され卵胞の成長を調整する因子で、IGF-1が高泌乳牛群の分娩後の卵巣機能再開のサインとなることが報告されている。給与群では血中IGF-1濃度が対照群に対して有意に増加し、繁殖成績においても分娩後早期に初回発情が現れ、受胎率も高い傾向にあった。これにはR. oryzae水抽出物給与による血中NEFA濃度抑制によるエネルギーバランス改善や、IGF-1分泌促進といった肝機能改善作用が関与していると予測された。 肝障害モデルラット肝臓での遺伝子発現解析では、R. oryzae水抽出物投与によりIL-6受容体以降のシグナル活性化による脂肪酸合成抑制や細胞分裂促進が認められ、機能改善と肝再生の一端を担っていることが認められた。これらがHGFを介した肝再生経路と併せて機能することで肝機能修復を早め、IGF-1分泌能を維持あるいは回復させることで、生殖機能の低下を予防する可能性が示唆された。加えて上昇したIGF-1分泌がオートクライン的に作用して脂肪酸合成抑制に関与し肝機能の改善を増強している可能性も示唆された。このようにR. oryzae水抽出物の肝障害抑制効果は複数の経路による複合的な作用のため、効果の発現までに一定時間を要すると考えられ、肝障害誘発後の投与による治療的効果は認められなかった。
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