2012 Fiscal Year Research-status Report
二母性マウス胚を用いた新規刷り込み遺伝子探索方法の開発
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24780265
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川原 学 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70468700)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 精子ゲノム / ゲノム刷り込み |
Research Abstract |
精子などの生殖細胞や体外産生胚のゲノムとしての正常性を評価する場合、父性メチル化刷り込み遺伝子の発現調節領域を完全に把握する必要がある。本研究の第一の目的は、精子ゲノムを用いずに個体発生を誘導する二母性マウス作出系を用いて父性メチル化インプリント遺伝子の数を規定することにある。 まず初めに胎齢12.5日における二母性胎子と、野生型胎子の遺伝子発現差をマイクロアレイ解析により比較することによって、インプリント候補遺伝子をスクリーニングした。さらに、既知のインプリント遺伝子に関しては、候補遺伝子がある染色体のみ、データベースを参考に調べた。その結果、二母性マウス胚で2倍以上の発現差がみられた遺伝子が33個検出された。また、既知のインプリント遺伝子と、インプリント候補遺伝子の染色体地図上の位置を調べた。 次に、本研究で検出した33遺伝子について多型解析による発現アリルの特定に取り組んだ。33遺伝子全てについて、C57BL/6(B6)系統とJapanese Fancy Mouse 1(JF1)系統について多型を調べ、B6×JF1 、JF1×B6のF1マウスtotal RNAサンプルを用いてダイレクトシークエンスを行い発現アリルを特定した。その結果、全ての遺伝子ついて両アリル発現、すなわち、非インプリント遺伝子であることが証明された。 以上の結果から、多型解析により発現アリルを特定した33遺伝子についてはインプリント遺伝子では無いことが証明され、マウスゲノムに置いて全身性で発現する新規の父性メチル化インプリント遺伝子は7、9、および12番染色体上以外には存在しない可能性が強く示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、4つ段階に分けての研究遂行を計画していた。すなわち、(1) 体外受精胚および二母性胚に由来するマウス胎子および胎盤の遺伝子発現比較、(2) 新規父性メチル化刷り込み‘候補’遺伝子のスクリーニング、(3) 近交系間多型情報に基づく片親性発現の確認、(4) 新規父性メチル化刷り込み遺伝子の個体発生間における機能解析 である。このうち、多型解析に使用するB6-JF1間の多型情報の蒐集が予想よりも早く進み、(3)までの研究がほぼ完了しつつある。したがって、候補遺伝子の選定基準をさらに拡大し、解析領域を広げて研究を行うことが可能となった。 また、研究計画では全身性で発現が検出されるような遺伝子のみに焦点を当てていたが、さらに、詳細な解析として臓器ごと、すなわち、神経系、消化器系、泌尿器系などに分類しての解析を予定している。また、多型が検出されなかったいくつかの遺伝子があったため、今後はさらに解析領域を拡張することで発現アリルの特定を続け、父性メチル化刷り込みインプリント遺伝子の有無決定の作業を進めていく予定である。 以上から、研究進行速度は極めて良好であり、次年度以降もさらに詳細かつ決定的なデータとするよう研究計画にしたがって実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況は、当初予定よりも極めて早く進行しているが、さらに決定的な実験結果を得るためには、解析遺伝子数の増加、解析領域の拡張、対象臓器の分類を行われなければならない。インプリント遺伝子は性特異的な発現を示す一群の遺伝子を指すが、この片親性発現を特定の臓器でのみ示すパターンも多い。とくに、脳を含む神経領域のインプリント遺伝子の発現パターンは特徴的である。さらに、本研究ではマイクロアレイによる発現解析結果に基づいて解析を進めているが、一次スクリーニングの段階では発現レベルが2倍以上の差を示したものに限定し、さらに、他の遺伝子型の二母性マウスでも発現差がみられたものに絞った。このようなスクリーニング法は極めて厳密であることから、微量のサンプル間誤差や試験管誤差により本来候補遺伝子の対象となるようなものも除外されてしまう可能性を含む。したがって、候補遺伝子の選定基準を適宜緩和して解析遺伝子数を増量することでより決定的な実験結果を得られるものと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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