2012 Fiscal Year Research-status Report
核膜孔構成因子TMEM48が担う核内ゲノムダイナミクスの制御機構の解明
Project/Area Number |
24780270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
秋山 耕陽 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (20515142)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核膜孔 / 発生生物学 / 配偶子形成 |
Research Abstract |
表記課題を達成するために平成24年度は、下記の研究をすすめた。 1. Tmem48の細胞周期における機能の解析 NIH3T3細胞を用いてsiRNAによるTmem48のノックダウンの条件検討を行った。3種のsiRNAプローブについて最終濃度を0、25、50nMおよび100nMでトランスフェクションし、トランスフェクション後24、48、72および96時間の時点でTmem48の発現を抑制できているかウェスタンブロットにより調べた。その結果、いずれの時点においても完全に細胞が死滅してしまう、もしくはTmem48の発現が抑制できなかった。トランスフェクション試薬の使用量を変化させる等、条件を精査したが適切な条件を見出すことができなかった。 2. 胎仔線維芽細胞におけるDNA修復機構の解析 DNAの二本鎖間に架橋を形成することでDNA損傷を誘導するマイトマイシンC(MMC)を培養液中に添加することで過度なDNA 損傷を誘起することでDNA 修復機構におけるTMEM48 の関与の有無を調べた。各遺伝子型の胎仔線維芽細胞に対してMMCを 0、0.25および1.0μg/mlとなるように添加した培養液で18時間培養した。MMC暴露後、MMCを含まない培養液で48時間培養することでDNA損傷修復を誘導した。これらの条件を各遺伝子型についてDNA 損傷のマーカータンパク質であるγ-H2AXとSUMO によるタンパク質修飾に関わるタンパク質の発現を免疫組織化学染色により調べた。その結果、Tmem48を欠損したsks/sksの胎仔線維芽細胞では、MMCが0、0.25および1.0μg/mlのいずれの濃度であってもγ-H2AXにより示されるDNA損傷頻度とそれらが修復される推移がsks/+および+/+と大きな違いがないことが明らかになった。さらに、の発現パターンにも遺伝子間における相違は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで核膜孔は、細胞質と核内をつなぐ物質輸送路としての役割に特化していると考えられていたが、近年、その役割が物質輸送に限られず、細胞周期やDNA損傷修復などの核内ゲノムダイナミクスの制御に直接関与することが明らかにされてきている。しかし、配偶子形成や胎仔の発生における細胞周期やDNA損傷修復などの制御と核膜孔の関連性は不明なままである。本研究は、Tmem48の配偶子形成や胎仔の発生過程における細胞周期やDNA損傷修復を含む核内ゲノムダイナミクスにおける役割を組織学的、細胞学的および分子生物学的手法により明確にすることを目的とした研究計画を進めている。本年度の研究成果からは、培養条件下で人為的に誘起されたDNA二歩鎖間架橋に起因するDNA損傷の修復や修復過程におけるタンパク質のSUMO化にTmem48が寄与している可能性を否定することができた。一方で、細胞周期の遅延や周期性における役割についてはsiRNAの効果的な条件を決定することができなかったことから本年度では調べることができなかったが、siRNAを利用する実験では条件検討に時間を要することが知られていることから、研究計画の想定の範囲と考えている。以上のことから本年度の達成度は、(2) おおむね順調に進行している、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Tmem48の細胞周期における役割を調べるためにsiRNAの効果的な条件を新たな導入試薬を使用するなどすることですみやかに決定する。また、精子形成過程で生じるDSBの修復過程は、体細胞で生じるDNA損傷修復と非常に類似しているが、sks/sksの代表的な表現型である減数分裂第一分裂前期における異常は、DSBsの修復過程に生じている。それゆえ、培養条件下での体細胞でDNA損傷修復に異常が観察されなかったが、精子形成過程で生じるDSBの修復過程の推移を調べることは不可欠である。それゆえ研究計画に沿って研究を遂行する予定である。同様に、初期胚の発生にはDNA 修復機構が活発に働いている時期であることから、sks/sks 由来の卵子ではDNA修復機構に異常が生じている可能性がある。そこで、研究計画に沿ってsks/sks 由来の卵子におけるDNA修復機構におけるTMEM48 の関与を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
siRNAを培養細胞に導入するための条件検討を正確に行わなければ目的とする細胞周期におけるTmem48の役割を明確にすることができないため、siRNA導入後の必要な試薬の購入に遅れが生じたため次年度に繰越す研究費が生じた。一方で、siRNAを使用した研究は、次年度の研究計画には含まれていないことから、研究計画および研究費の使用計画を大きく変更する必要は無く、当初の使用計画に沿って研究を遂行することができる。
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