2012 Fiscal Year Research-status Report
種特異的な哺乳類受精時におけるカルシウムオシレーション誘起機構の解明
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24780272
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
伊藤 潤哉 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (30454143)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 受精 |
Research Abstract |
受精時において卵内にて誘起されるCa2+イオンの反復的上昇は,精子内に存在する卵活性化因子phospholipase C zeta(PLCz)によって引き起こされると考えられている.PLCzの同定および機能解析はマウス・ヒトでは行われているが,大動物においてはほとんどされていない.本年度は各動物種のPLCzの機能を比較・検討する目的で,はじめにウマを用い,未だ同定されていないウマPLCz遺伝子クローニングと機能解析を行った.ウマ精巣由来のcDNA を作製し,ウマゲノムDNAの配列より作製したプライマーを用いてウマPLCζの遺伝子クローニングを行った.また,ウマ凍結融解精子を用いてウエスタンブロッティングおよび免疫蛍光染色を行った.ウマ,ヒト,ウシ,マウスPLCzのcRNA を作製し,マウス成熟卵に注入しCa2+濃度の変化を測定・比較した.また細胞内での局在を明らかにする目的で,蛍光タンパク質と融合したウマPLCz cRNAを作製しマウス成熟卵に注入し観察した.RT-PCRにより全長1917 bpの産物が得られ,シークエンス解析の結果より,多種のPLCzと高い相同性を示したことから,我々が得たPCR産物はウマPLCzであると考えられた.また,ウェスタンブロッティングの結果からウマPLCzは精子内でタンパク質として発現していること,免疫蛍光染色の結果より精子頭部および尾部に局在することが確認された.さらにウマPLCz cRNAの注入により,Ca2+イオンの反復上昇が誘起され,その頻度は他種のPLCzよりも高い割合を示した.また卵内においてPLCzは核を除く卵細胞質内に広く存在していた.以上のことから,ウマPLCzは他動物種のPLCzと比較して高い活性をもつことが始めて明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初めてウマPLCzの遺伝子クローニングには成功した.それらの結果の一部はすでに英文による学術誌に投稿し,掲載が決定している.一方ドメインごとの活性比較については十分検討できておらず,次年度に行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
IP3受容体の局在に焦点を当て,マウス,ブタ等の異なる動物種の卵を用いて,どのような因子がIP3Rの局在および機能を制御しているかを明らかにする.それぞれMPF,MAPKおよびpolo-like kinase 1(Plk1)の阻害剤であるroscovitine,U0126およびBI-2536を添加した培養液でそれぞれの種の卵を培養し,IP3受容体の局在変化を免疫蛍光染色を用いて明らかにする.さらにCa2+オシレーションの生物学的な意義を明らかにする目的で,Ca2+オシレーションが誘起された(されなかった受精卵)を胚移植し,Ca2+オシレーションが母体への着床・妊娠の維持および出産まで及ぼす影響についてin vivoおよびin vitro解析を行う.これらの研究の一部は,哺乳類の着床・妊娠に関して多くの研究実績をもつアメリカ合衆国シンシナティ小児病院のDr. Deyのもとで行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)