2013 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠の成立を左右するウシ黄体機能及び構造変化の網羅的解析
Project/Area Number |
24780276
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
作本 亮介 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物生産生理機能研究ユニット, 主任研究員 (20343999)
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Keywords | ウシ / 妊娠 / 黄体 / 受胎率 / マイクロアレイ / ケモカイン / コラーゲン |
Research Abstract |
本研究では、哺乳動物の受胎率向上や生殖周期制御に向けた新規技術開発に資する基礎的知見を提供することを目的として、ウシの妊娠成立と維持に必須な内分泌器官である黄体における、妊娠に伴う遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、妊娠黄体に特異的な発現動態を示す生理活性物質の特定とその機能解明を試みた。 前年度の研究から、妊娠黄体と非妊娠黄体との間で主要な繁殖関連物質(プロスタグランジン等)の発現量が異なることを初めて明らかにした。本年度はウシオリゴDNAマイクロアレイ(15k)を用いて両者の違いをより詳細に解析し、人工授精後20~25日、40~45日、150-160日目の黄体では、発情周期10-12日目の非妊娠黄体と比較して、それぞれ138個、265個、455個の遺伝子発現が変化し、妊娠が進むにつれて変動する遺伝子数が多くなることを明らかにした。これらの遺伝子群の中で最も顕著な発現変化を示したケモカイン関連遺伝子について、リアルタイムPCRや酵素免疫測定法を用いて解析を進めた結果、エオタキシン遺伝子ならびにタンパク質発現が妊娠黄体(150-160日)で最も高くなることが示され、リンフォタクチンおよびENA-78発現が妊娠黄体では低くなることが示された。免疫組織化学染色により、これらの受容体が黄体細胞で確認されたことから、ケモカインが妊娠黄体の機能調節、特に妊娠維持機構に関与する可能性が示された。さらに、妊娠黄体では細胞外基質であるコラーゲン(タイプI-IV)の遺伝子発現が有意に低く、妊娠黄体と周期性黄体が構造的に異なる一因であることも示唆された。 本研究の結果から、妊娠することで特異的にその発現が変化する生理活性物質が明らかとなり、これらの知見をもとにしてケモカイン等の発現をコントロールすることにより、ウシの妊娠成立・維持を人為的に制御する技術開発に貢献することが期待される。
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Research Products
(2 results)